【第15回】 2009年01月20日
高支持を政策実行力に転化できるか
「オバマ人事」の今後を読み解く
2009年1月20日、バラク・オバマ氏のアメリカ合衆国大統領就任式が行われる。これまでオバマ新大統領が就任前にもかかわらず、数日置きに明らかにしてきた新政権の閣僚人事については、多様な人材の閣僚起用、特にかつての政敵まで起用することなどに賛否両論あるようだ。また、東アジア政策について、オバマ政権が「日米」と「米中」どちらを重視するのかも論争となっている。
今回は、「オバマ人事」を検証する。私は米国政治については、英国に対して持っているような「土地勘」がないが、この連載の標榜する「公開情報と政治学の方法論を使っての分析」で、「オバマ人事」を読み解いてみたい。
「オバマ人事」を考える際、まず大事なのは「大統領制」と日本や英国のような「議院内閣制」の違いが、閣僚の行動に与える影響を考えることだ。「議院内閣制」では、基本的に国会議員が閣僚に就任するし、閣僚を支える官僚組織のスタッフは、基本的に終身雇用制に近い雇用形態だ。閣僚やスタッフは基本的に政党や官僚組織に対する忠誠心を持ち、政府の支持率低下に際しては、「組織防衛」のために政府を支える傾向がある。
一方、「大統領制」では、原則的に議会の外部から閣僚が任命される。また、官僚組織でもスタッフの大規模な人事異動と新規採用がある。閣僚やスタッフは、組織への忠誠心が弱く、閣僚就任は個人のキャリア形成の一環と考える傾向になる。従って、政権が支持率低下に陥った場合、閣僚やスタッフはキャリアに傷をつけないために、責任回避を考え始める。
高支持が求心力を生む好循環
「オバマ人事」の戦略性
「オバマ人事」の特徴は、上下両院議員や知事など議会や行政トップ経験者を多数入閣させた実務重視の即戦力政権だということだ。多少の意見の相違には拘らず、強い個性と能力、そして既に高い実績を持つ人物を閣僚に起用した「オバマ人事」は、オバマ大統領への期待を、現在のバブル的な人気から、政権への実態ある信頼に変えていく効果がある。
例えば、ファーストレディーとしての経験があるヒラリー・クリントン国務長官、ニューヨーク連銀総裁時代に金融危機対策の立案で中心的な役割を担ってきたガイトナー財務長官、第一次ブッシュ政権のネオコン主導の政策を現実的で穏健なものに変えた立役者・ゲーツ国防長官、そしてクリントン政権に財務次官・財務長官を経験したサマーズ経済担当の大統領補佐官兼国家経済会議(NEC)議長などは、既にそれぞれの分野で実績があり、高い評価を得た人物たちだ。
また、彼らの仕事を速やかに法律化するために必要な議会対策にも、エマニュエル首席補佐官、トム・ダシュル厚生長官など実績あるベテランを起用している。民主党には「ブルードッグ」と呼ばれる財政タカ派50人が議会に陣取るが、エマニュエル氏らの起用は、議会を抑えての金融危機対策や大規模な財政出動・公的資金投入などの景気刺激策の実現への現実味を高めるものである。
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著者プロフィール
- 上久保誠人
(早稲田大学グローバルCOEプログラム客員助教)
1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。博士論文 タイトルはBureaucratic Behaviour and Policy Change: Reforming the Role of Japan’s Ministry of Finance。
この連載について
「大物政治家に話を聞いた」「消息通に話を聞いた」といった大手マスコミ政治部の取材手法とは異なり、一般に公開された情報のみを用いて、気鋭の研究者が国内・国際政局を分析する。
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