先週は、政策のモラルハザードが世界的に蔓延し、日本も例外でないことを説明しましたが、もしかすると日本のモラルハザードが最もひどく、かつ最もレベルが低いのかもしれません。その典型例が「かんぽの宿」問題での政権の対応です。
「かんぽの宿」問題の経緯
そもそも郵政民営化の際に、かんぽの宿は2012年9月末までに譲渡か廃止することが法定されました。それを受けて日本郵政は、全国の70施設を一括で売却することとし、オリックスが108億円で競争入札を落札しました。
しかし、オリックスへの一括売却に鳩山総務大臣が待ったをかけました。鳩山大臣の主張は、要約すると以下の通りです。
① オリックス落札に至る経緯が不透明
② 一括売却は望ましくない
③ オリックスの宮内会長は規制改革会議の議長を務め、郵政民営化に関連したので、オリックスが日本郵政の資産売却に応札するのは不見識
かんぽの宿を一括売却するには別会社とする必要があり、そのために必要な総務大臣の認可を得られそうにないということで、日本郵政はオリックスへの一括売却の方針を凍結し、検討委員会を設置して譲渡のやり方を全面的に見直すことになりました。
問題の本質は郵政民営化の後退
今回の騒ぎに乗じて、様々な政治家や評論家の類いの方が発言していますが、「宮内会長はけしからん」、「売却価格が安過ぎる」、「地元の資本に売却すべき」など、呆れる位に感情論ばかりです。しかし、政策の観点からは2つの重要なインプリケーションがあり、それを看過してはいけないのではないでしょうか。
第一の問題は、かんぽの宿の一括売却という日本郵政の経営判断を否定するのは、郵政民営化の流れを逆行させるのに他ならないということです。