IMF(国際通貨基金)による「世界経済見通し」(IMF、World Economic Outlook)が改定された。改定版では、世界の実質GDPの対前年成長率が、2009年の-0.8%というマイナス成長から抜け出し、2010年には3.9%、2011年には4.3%と、プラス成長に転じると予測されている。これは、前回(2009年10月)の予測からの上方改定である。つまり、世界経済の回復は、これまで考えられていたよりは順調に進みそうだということだ。
国別に見ると、とくに注目されるのは、イギリスについての状況改善である。前回(2009年10月)と比べると、実質成長率が、2010年は0.4%ポイント、2011年は0.2%ポイントほど上方改定されている。
それに対して、日本についての数字を前回と比べると、2010年は据え置きで、2011年については0.2%ほど下方改定された。
なぜ日本の回復が遅いのか
各国ごとに2007年を1として2011年の実質GDPの指数を計算してみると、【図表1】のとおりとなる。
まずアメリカは、2010年において2007年の水準を回復し、2011年にはそれより3%ほど高くなる。つまり、アメリカは2010年において経済危機から抜け出し、それ以降、順調な成長軌道に乗るわけだ。
イギリス、ドイツは、2011年において、ほぼ2007年の水準を取り戻す。
それに対して日本は、2011年になっても、2007年より2.8%ほど低い状態にしか回復しない。これからはっきりわかるように、日本の回復は他国に比べて遅くなると予測されているのだ。
こうなる理由は、つぎのようなことであると考えられる。
第1に、この連載(第53回、54回、55回)ですでに見てきたとおり、産業別の回復度で見ると、金融業と情報関連産業の回復が顕著である一方、製造業の利益は、大きく落ち込んで回復しない。そうなるのは、金融業と情報関連産業では雇用を調整すれば企業の業績が回復するのに対して、製造業では過剰設備の負担が残ってしまうからだ。