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野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む

積立方式で始まったはずの年金制度は、
なぜ途中から賦課方式と説明されるようになったのか?

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第86回】 2010年9月11日
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 「年金の問題は、人口構造の変化に起因する部分がきわめて大きい」と言われる。

 日本の人口構造が大きな問題を抱えているのは、間違いない事実である。高齢者が増加する半面で若年者が減少するから、年金収支の悪化は、避けることができない。

 この連載においても、日本の年金がこの点で大きな問題を抱えていることは、厚生年金の将来シミュレーションに関して具体的な数字で示した(第67回第73回)。マクロ経済スライドも、この問題への対処として考えられている。

 ところで、年金をめぐる議論は、「人口高齢化が進めば年金財政は悪化する」ということを自明の理として受け入れている。そして、「人口高齢化は現実に進行しているのだから、これに対して保険料引き上げや給付の削減などの措置がなされるのはやむを得ない」と考えられているのである。

積立方式なら高齢化は
年金の問題を引き起こさない

 しかし、「人口高齢化が進めば年金財政は悪化する」というのは、自明の理ではない。これについて説明しよう。

 年金の財政方式としては、「積立方式」と「賦課方式」がある。前者は、若い現役時代に納付した保険料を積み立て、運用益も加えた額を老後に年金として給付する仕組みである。私的年金の場合には各個人ごとに収支が均衡化するように保険料と年金額が設定されるが、公的年金の場合には、ある年齢階層(あるいは数年間の年齢階層)で収支が均衡するように制度が設計される。

 これに対して賦課方式は、現在働いている現役の人から保険料を徴収し、現在の高齢者に年金を給付する仕組みである。各年度(あるいは数年間)で収支が均衡するように制度が設計される。

 一方、人口高齢化を引き起こす原因としては、つぎの2つがある。第一は、平均余命の伸長だ。これによって高齢者の絶対数が増加する。これを「絶対的高齢化」と呼ぶことにしよう。第二は、少子化(出生率の低下)である。仮に絶対的高齢化が起こらなくとも、少子化が起きれば、若年者に対する高年者の比率は上昇する。これを「相対的高齢化」と呼ぶことにしよう。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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