【最終回】 2007年11月30日
情報対策が遅れれば、
社会パニックを引き起こす!
情報提供による「正しい理解」こそが最も必要な備え
いま、日本に「新型インフルエンザ」襲来の危機が迫っているという。新型インフルエンザ――それは“鳥インフルエンザウイルス”がヒト型に変異したもの。「H5N1型」という強毒性の新型ウイルスだ。このウイルスが大流行すれば、未曾有の世界的大惨事となり、おびただしい数の死者はもちろん、経済・社会機能がマヒする可能性が高いという。その危機に対し、感染症の専門家である岡田晴恵氏は警鐘を鳴らす。
~【緊急特集】最終回~
最終回では、危機管理上での重要な要素である情報提供・情報共有について述べておく。社会危機が発生した際には、正確な情報の不足に加えて、行政当局や情報提供機関の出す情報への不信感が人々の間で様々な憶測と風評を呼び、社会のパニックを引き起こした例は歴史上においても枚挙にいとまがない。
新型インフルエンザ大流行も社会危機に結びつく「災害」であり、「リスク管理」によって初めて被害の軽減と社会機能の維持が可能となる。そのためには、リスクコミュニケーションと呼ばれる情報提供・共有の技術が必須となる。
現在の社会では、さまざまなメディアを通して、ありとあらゆる情報が瞬時にして世界を駆け巡る。情報には、発信者の意図とは関係なく、それを受け取る側の理解がすべてを決めていく傾向がある。同じ情報でも、受け取り方に違いが出るのは避けられないが、これが次々と増幅されると、とんでもない情報として広がることとなる。センセーショナルな情報ほど注目を集めやすく、これが社会全体の認識となっていく集団ヒステリーは、程度の差こそあれ、日常でもしばしば経験されるところである。
正しい情報を
適切な量で国民に提供する
1918年のスペイン風邪大流行時をはじめ、2003年のSARSの流行の際にも、いろいろな情報が氾濫し、国民はこれに振り回された。過去においては、情報不足から来るさまざまな憶測が風評をもたらした。
しかし、情報が氾濫する現代社会においても、普段では考えられない迷信じみたことが、まことしやかに受け入れられたりするのである。情報伝達方法が格段に発達して情報量が増えても、基本的な問題は変わっていない。むしろ情報量の増加は、対応を誤ればかえってパニックを助長することになろう。
リスクコミュニケーションとは、専門家による「リスク評価」の結果を行政、一般、専門家に知らせることと、行政対応である「リスク管理」について一般、専門家に知らせるという、両方向の情報共有活動である。
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著者プロフィール
- 岡田晴恵
(国立感染症研究所研究員)
共立薬科大学薬学部大学院修士課程修了、順天堂大学医学部大学院博士課程中退。ドイル・マールブルク大学医学部ウイルス学研究所留学(アレクサンダー・フォン・フンボルト奨学研究員)。現在、国立感染症研究所ウイルス第3部研究員。専門は感染免疫学、ワクチン学、ウイルス学。感染症に関する著書多数
この連載について
国立感染症の現役研究員が強毒性新型インフルエンザウイルスの本当の恐ろしさを告白。危機意識の低い日本人に警鐘を鳴らす!
新型インフルエンザが世界各地で発症、ついに日本に上陸したら――。現役研究員が告発する驚愕の完全シミュレーションストーリー。TVや雑誌等のマスコミが次々ととりあげる話題の一冊。1680円(税込)
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