いつまでも若々しく健康で、できれば長生きしたい、これは読者の皆さんのほとんどが願うことだと思います。

 この健康長寿を実現しようというアンチエイジング(抗加齢)医療が注目されています。「アンチエイジング」というと“女性の美容”のことと思われがちですが、アンチエイジング医学は、心身にあらわれる老化の兆候を早めに発見して「老化を予防」するための治療・指導をしていくという予防医学です。

 先日、ある講演会に参加した時のこと、アンチエイジング医療の最先端は、「予防医学」から遺伝子検査による「予測医療」へと向かっています、という壇上の女医さんの言葉にわたしの寝不足の頭が反応しました。

――未来の健康診断は、悪い数値を改善するのではなく、遺伝子プロフィールに基づいて健康な人をさらに健康にする健康指導がおこなわれるようになる、なんていうことがあるのだろうか…。たしかに100歳以上まで長生きできそう。でも、健康のためには遺伝子のことまで知ることが必要なの…?

一部のクリニックで始まっている
「遺伝子検査」による予測医療

 遺伝学の研究は、心筋梗塞、高血圧、糖尿病、骨粗鬆(しょう)症、認知症など、あるいは悪性腫瘍、アレルギー疾患や感染症に対する抵抗力など、あらゆる健康問題に遺伝子が関与することを明らかにしています。

 遺伝子検査による予測医療は、すでに、一部のクリニックで部分的におこなわれています。

 よく知られている肥満遺伝子タイプによるダイエット指導の他に、例えば、肺がん、メタボリックシンドローム、高血圧、糖尿病、心筋梗塞、アルツハイマー病などになりやすい遺伝子をもつかどうかの検査を受けることができます。もし遺伝子を持つことがわかった場合は、予防のための生活指導やサプリメントのアドバイスなどがおこなわれます。

 乳がん・卵巣がんの遺伝子検査も一部の医療機関で受けることができます。遺伝子が発見された場合は、例えば、若いうちから通常のマンモグラフィーより精度の高いMRI検査を定期的に受けて早期発見の可能性を高めることができます。あるいは抗がん剤による予防治療という選択肢もあるかもしれません。

 ただしガンの感受性検診に関しては、遺伝子をもつことがわかった場合の本人と近親者の精神的な負担などの問題もあり、検診のメリットが議論となっています。

「痛風遺伝子」保有者は
発症リスクが40倍に!

 新しい遺伝子リンクの報告は現在も毎日のように続いています。悪性腫瘍から、長寿遺伝子、ねばねば耳垢の遺伝子まで、すべての遺伝子リンクが特定されています。

 最近も、男性型脱毛症や痛風、さらに男性の早漏の遺伝子リンクまで報告されました。男性型脱毛症の遺伝子をもつ男性は、若くして抜け毛に悩む可能性が7倍まで増加するようです。痛風の遺伝子は発症リスクを最大でなんと40倍に増加させるといいます。早漏はセロトニンと呼ばれる幸福感をもたらす脳内物質を制御する遺伝子の変異と関係があることがわかりました。