「早々に失速するのではないか・・・」
そんな前評判を一蹴するかのように、今秋外資系SPA(製造小売)企業へネス・アンド・マウリッツ(H&M)が新たに4店舗をオープンさせる。
今秋、新たに4店舗をオープンさせるH&M |
日本1号店である銀座店オープン時には約5000人が列をなしたが、熱狂の裏では当初から「多店舗展開に至る前にブームが去るのではないか」(ファッション業界関係者)と囁かれていた。
というのも、H&Mは「日本人が重視するサービスが不十分」(小島健輔・小島ファッションマーケティング 代表)という問題点を指摘されていたからだ。
ところが、その勢いは留まることを知らない。1号店のオープンから1年後の今年9月には、横浜店、渋谷店、初のショッピングセンターへの進出となるららぽーと新三郷店(埼玉)と、出店ラッシュが続く。
さらに11月には新宿店、来春には大阪店を出店する予定だ。多店舗展開に向けての準備はまさに順風満帆であり、「ブームが一過性のものでない」ことを証明することとなる。
日本は、生き残りがとても難しいマーケットだ。伊藤忠ファッションシステムの辻田泰子氏によれば、「日本人は(1)品質にうるさい、(2)ファッション性を気にする人が多い、(3)ジャストフィットのサイズ感を重視するなど、他国と比較して商品に求める水準が高い。世界各国で成功しているからといって日本で成功するとは限らない」という。
つまり、外資系が日本で成功するためには、世界各国で採ってきた戦略の他に、日本のマーケットに合わせた「現地化戦略」を行なっていくことが、非常に重要なのである。
そのため、一定以上のクオリティの商品を安く提供するファーストリテイリング(ユニクロ)などの日本企業と比べて、「低価格の新商品を次から次へと発売するだけ」というイメージが強い外資系は、「競争力が低い」と思われがちだった。
実際、過去日本に上陸して撤退を余儀なくされたケースも少なくない。彼らのビジネスモデルを指す「ファストファッション」という言葉には、そのような揶揄も込められている。
しかし、日本におけるH&Mのこの人気ぶりをみる限り、外資系を「単なるファストファッション」と言い切るのは、適切ではなさそうだ。
では、サイズや品質・サービスの点で日本での「生き残り」に疑問符が付されていたにも関わらず、H&Mが多店舗展開に至ることができた理由とは、何だろうか。実際の店舗に赴き、現場をつぶさに観察すると、巷のイメージとは異なる真実が垣間見えてくる。