2010年南アフリカW杯への最後の関門、アジア最終予選の対戦相手が決まった。日本が入ったA組に組み込まれたのはオーストラリア、ウズベキスタン、バーレーン、カタール。5ヵ国中2位までに入ればW杯出場が決まる。W杯常連の韓国、イラン、サウジアラビアなどが入ったB組に比べれば楽といわれるが、前回のドイツW杯で敗れたオーストラリアはもちろん、他の3ヵ国も決して侮れないチーム力を持つ。厳しい戦いが続くことは確実だ。

 日本代表は3次予選2組を一応トップ通過したが、内容はほめられたものではなかった。最終予選でも当たるバーレーンとは1勝1敗、オマーンとは1勝1分と中東勢に苦戦した。原因は圧倒的に攻めているのに点が取れない、おなじみの「決定力不足」だ。

 98年のフランスW杯から3大会連続で出場している日本は、アジアの強豪国に数えられるまでになったが、それでも代名詞のようにつきまとうのが「決定力不足」。最終予選に臨む日本代表に多くの人が不安を感じているのは、この課題が残っているからだ。

 サッカーファンはそれぞれ見解を持っているだろうが、筆者は日本特有のボールゲームに対する考え方、それに基づく選手育成法に問題があると思っている。決定力不足はサッカーに限らず、ラグビー、バスケットボール、ハンドボール、ホッケー、水球など敵味方が入り乱れてボールを奪い合い、ゴール数で勝敗が決まるゲームに共通する課題なのだ。

「パス練習」から始める
幼少期に問題あり?

 そう考えるようになったのは、10年ほど前、ラグビー日本代表監督だった平尾誠二氏(現・神戸製鋼総監督)に話を聞いた時からである。高校生を中心とした若い選手に対し、ラグビーへの取り組み方をアドバイスするというテーマだったのだが、ちょうど99年のラグビーW杯を前にした時期で、「強豪国との差をどう埋めるか?」を平尾氏は考えに考え抜いていたのだろう。強豪国の選手と日本選手の差、育つ環境の違いなどを熱く語ってくれた。その要旨を紹介する。

 ――ゲームに勝つには相手より点を多くとることだ。強豪国の選手はこの原理原則が体に染みついている。そうした国の選手の多くは物心がつく前の幼児期からボールに触れる。ルールは理解できないが勝ち負けぐらいは解かるから、大人は遊びの延長で子どもにゲームをやらせる。「あそこまでボールを運べば点になるよ」などと言って。そうすると、ボールを持って走る子もいる、前に投げる子もいる、キックする子もいる。自分が思いつく方法でボールをゴールまで運び、点を取る喜びや勝つ楽しさを味わうのだ。