四川大地震は、確かに「天災」であった。しかし、いまや畢竟するに、それは「人災」にさえなっている。

 地震発生から日が経つにつれ、その甚大な被害状況が明らかになってきた。中国国務院の発表によれば、現時点(5月21日)での死者数は4万1353人、行方不明者3万2666人、負傷者27万4683人。犠牲者、被災者ともにさらに増える見込みだ。

 地震の直撃を受けた都市が世界最大級の活断層上に位置していたという不幸は確かにある。だがここまで被害の拡大したのは、それ以外の理由があったとしか考えられない。

 当初、風評として伝えられていた学校の校舎ばかりが倒壊するという噂はどうやら事実であったようだ。行政当局も黙認していた手抜き工事は、倒壊した建物に鉄筋が使われていないことで明確になった。

 きょう成都市では、そうした行政の欺瞞を知った親たち約300人が、頑丈な市当局の建物に押し寄せ、役人たちに詰め寄った。政治腐敗と賄賂の横行が、「一人っ子政策」のため、文字通りかけがえのなかった一人息子(娘)を永遠に彼らから奪ったのだ。こうしたデモは各地で発生しているという。

日本でも4割近い校舎で
耐震性に問題あり

 四川で起きた今回の未曾有の災害は、日本にとっても決して他人事ではない。

 今から85年前の1923年、四川で同じような大地震が発生したちょうど半年後、関東大震災が首都・東京を襲っている。死者9万9千人、行方不明者4万3千人、負傷者10万人を超え、南関東全域に壊滅的な打撃を与えた。

 同じユーラシアプレートの東西の両端に位置する四川と関東は、ともに地震の多発地帯にあり、潜在的な脅威に晒されてきた。