これは異議申し立てしたい問題の一部でもあるが、率直に言って、このダイヤモンド・オンラインの原稿でも、特に公示期間中は選挙に関連した話題を自由に書くわけには行かない。だが、選挙に対する関心は投票が終わると急にしぼむように低下する。今のうちに是非言っておきたい選挙の問題が幾つかある。
選挙の開票速報は、自分が立候補したわけでもなければ、競馬のように馬券を買っているわけでもないのに興奮を覚えながら画面の前に釘付けになる天然の娯楽番組だが、近年、「当確」が出るのが非常に早くなっている。有力候補の場合、開票の第一報と共に「当確」が出ることが珍しくない。テレビ的に、当確は早い方が価値がある。各局は当確の早打ちために競争していると見ても間違いではないだろう。
当確打ちの重要な根拠となっているのが、選挙当日に投票所の出口付近で行う(社によっては期日前投票も調査する)いわゆる「出口調査」だ。これに各社の情勢分析を合わせて、実際に投票された票の開き具合を見ながら当否を判断するというのが、当確打ちの大まかなプロセスだ。
筆者は、選挙に立候補したこともないし、新聞記者もやったことがないので、実際に情報をやりとりする現場を見たわけではないのだが、出口調査も含めて、選挙の情勢分析のデータが候補者に漏れているケースが相当にあるようだ。
たとえば、雑誌「Juornalism 8月号」(朝日新聞社刊。特集タイトルは「世論調査を調査する」)の「朝日、日経、輿論科学協会 プロが語る世論調査の到達点」というメディアに於ける調査の専門家三人の座談会(特にp9~p10)を見て欲しいのだが、世論調査をよく知る三人の出席者は、メディアから候補者の陣営に情報が漏れていることについて率直に語っている。
詳しくは上記雑誌を見て貰うとして、幾つか言葉を引用しよう。
M氏(A紙編集委員)「選挙事務所などを回ると、陣営の人は各メディアの情勢調査の数字を知っています。当日の出口調査の中間集計の数字まで、陣営に知らされていることさえある」
T氏(調査機関理事)「情勢調査などの数字が漏れているということをよく聞くし、実際に数字が回ってきます。政党関係者のほとんどが数字を持っているということもあります。私のような調査機関の者が情報を漏らすことはあり得ません。メディアの側から漏れるのでしょう。それは、仕方のないことかと思います。彼らは、一種の情報交換と考えているのでしょう。自分たちも提供するけれども、相手から情報を得る」