【第117回】 2010年02月10日
トヨタの記者会見に見る社長の孤独
メディアの反応
本題に入る前に道草しよう。トヨタ自動車のアクセル・ペダルに始まる不具合とリコールの問題については、トヨタ自身の対応の他にもう一つ興味深い注目点がある。
それは、個々のメディア毎のこの問題に対する報道姿勢の差だ。はっきり言って、トヨタ自動車はメディアにとっての米櫃とも言うべき広告の大スポンサーだ。一昨年来、広告費を大幅に絞り込んだことが報じられているが、それでも国内最大級のスポンサーの一つだし、往時は年間1千億円の広告出稿料を投じていた。
現場の記者はともかく、いわゆるデスクや編集長はトヨタのリコール問題関連の記事をびくびくしながら推敲しているはずだ。迷惑が掛かるといけないので、ある紙媒体とだけ言って置くが、ある媒体がリコール問題でトヨタに厳しい記事を何度か書いたところ、トヨタの広告関係の部署を通じてクレームがあったと言っていた記者がいた(クレームがあっただけで、広告費に変化があったとまでは聞いていない)。紙媒体も放送も現在広告料収入の落ち込みが深刻であり、どのメディアもトヨタに対する気遣いは半端ではないはずだ。
既に問題は大きくなっている。トヨタ自動車が記事の内容によって広告出稿を変えるような、自ら墓穴を掘るような対応はしないだろうが、メディア側の反応のちがいは興味深い。
たとえば、2月5日に行われた豊田章男社長がこの問題ではじめて登場した記者会見を報じる記事も、新聞によって報じ方に差が付いた。全国紙5紙の扱いを見てみよう。
「朝日」は一面トップ扱いで見出しは「トヨタ社長、陳謝」「品質問題『危機的な状況』」、「読売」は一面の目立つ記事で「トヨタ社長が陳謝」「プリウス対応明言せず」と報じた。共に頭を下げる豊田社長のカラー写真付きだ。品質が危機だ、という切り取り方も厳しいし、「プリウス」の名前が「陳謝」の文字と並ぶのもイメージ的には痛い。普通の報じ方だと思うが、トヨタには厳しい紙面だ。
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著者プロフィール
- 山崎 元
(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員)
58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。
この連載について
旬のニュースをマクロからミクロまで、マルチな視点で山崎元氏が解説。経済・金融は言うに及ばず、世相・社会問題・事件まで、話題のネタを取り上げます。
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