「ボーナスカットで住宅ローン滞納が続出!自宅を競売にかけられる人が増えている」
テレビや新聞のこんな報道に、思わずぞっと寒気を覚える人も多いことだろう。だが一方で、同じニュースにときめき立つビジネスマンもいるかもしれない。
会社で机を並べていても、1人は陰で泣き、もう1人は笑う――そんな職場内格差が今、ひそかに進行しているようだ。
不動産競売をめぐる悲喜劇の様子について、現場に聞いてみた。
派遣社員も薄給の新婚さんも―
“マイホーム狂想曲”に踊った11年前
債務者の自宅ポストに入れられた任意売却業者の手書きメモ。クオカードを贈呈するので、話を聞いてほしい、などと書いてある。 |
「もしも、家が売れなかったらどうなるの!? ――ご安心ください!私たち任意売却のプロにお任せを」
新築マンションのポストに、近頃こんなチラシが投げ込まれるようになった。この冬、「住宅ローン難民」が急増する可能性が高まっているからだ。
みずほ証券の予測によれば、民間企業の今冬の賞与の平均支給額が36万6000円(前年比13.8%減)。減少率は過去最大となる見込みである。ちなみに任意売却とは、住宅ローンの支払いが難しくなったとき、仲介者を通して不動産を売却すること。ただ、最近はこの任意売却を飛ばして、すぐ競売に持ち込む金融機関も増えているという。
「住宅の競売に関する相談件数が急増しています。リーマンショック以前と比べると倍ですね」
こう話すのは、内閣府認証NPO法人 競売債務者支援協会理事長の岡野雄一郎氏。
岡野氏によると、原因は不況によるボーナスカットだけではないという。追い打ちをかけているのが旧住宅金融公庫の「段階金利制度」だ。かつて「夢のマイホームローン」と呼ばれ、若いカップルなどがおおいに利用した制度である。
「当初10年間の金利が低めなことから人気を集め、1998年頃に利用件数がピークに達しました。ただし、11年目から金利が2%から4%へと倍に上昇するため、今年からとたんに返済が苦しくなったという人が多いです」
「家賃より安い返済額であなたもマイホームを!」
ほんの数年前まで、そんなキャッチコピーがよくちらしに踊っていた。若いカップルだけでなく、シングル女性たちもこぞってマンション購入に走ったものだ。