実家の相続で活用すべき「小規模宅地等の特例」を解説!
気をつけたい"3つの落とし穴"と、売却時の注意点は?

2018年4月23日公開(2019年3月15日更新)
ザイ・オンライン編集部

相続税において、亡くなった人が自宅として使っていた宅地等については「小規模宅地等の特例」という優遇制度があり、本来の評価額の5分の1(2割)の負担で済む。しかし、「小規模宅地等の特例」には気をつけたい「3つの落とし穴」があり、相続した実家を売却するにあたっても、いくつか注意点がある。うっかりしていると、不要な税金を支払わなければならないことになるので、注意したい。

「小規模宅地等の特例」とは?

 2015年からの相続税増税により、親が住んでいた実家の宅地等に課税されるケースが増えた。

 しかし、相続税の負担が重いと、亡くなった人と暮らしていた配偶者や親族が住み続けられなくなるケースも出てくる。

 そこで設けられているのが「小規模宅地等の特例」という優遇制度だ。亡くなった人が自宅として使っていた宅地等については、配偶者や亡くなった人と同居している親族などが相続した場合、本来の評価額から8割差し引いた額で相続税を計算するというものだ。

 例えば、宅地等の評価額が1億円であっても、この特例の適用が受けられれば評価額は2000万円で済む。

 亡くなった人が住んでいた実家の土地について、「小規模宅地等の特例」を受けるための主な要件は次のとおりだ。

◆「小規模宅地等の特例」を受けるための4つの主な要件
亡くなった人または亡くなった人と生計を一にする親族が居住していた宅地等であること
その宅地等が建物または構築物の敷地であること
その宅地等を次のイ~ハにあたる人が相続すること
※被相続人と生計を一にする親族が住んでいた宅地等についてはイ、ロのみ
亡くなった人の配偶者
亡くなった人と同居していた親族
亡くなった人と同居していないが下記の要件を満たす親族
・亡くなった人に配偶者がいないこと
・亡くなった人と同居している相続人がいないこと
・亡くなった人が亡くなる前3年間、日本国内にあるその人またはその人の配偶者の所有する家屋に居住したことがないこと(2018年4月1日より変更になるので注意※後述)
上記ロについては相続税の申告期限までその宅地等に居住し、かつ保有していること。上記ハについては相続税の申告期限までその宅地等を保有していること

 「小規模宅地等の特例」が適用され、亡くなった人が住んでいた宅地等の相続税評価額が8割軽減されるのは、その宅地等のうち330㎡(2014年12月31日までの相続では240㎡)までの部分に限る。これを超える部分については、通常の評価額となる。

 なお、亡くなった人が住んでいた宅地等のほかにも、亡くなった人が事業(アパートなど賃貸事業を除く)に用いていた宅地等(8割減)、亡くなった人がアパートなどの賃貸事業に用いていた宅地等(5割減)についても、一定の範囲で同じように「小規模宅地等の特例」が利用できる。

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「小規模宅地等の特例」が使えないケースは、課税負担が重い

 このように「小規模宅地等の特例」が利用できれば、相続税が大幅に軽減されたり、支払わないで済むこともある。

 しかし、以下で挙げる3つのケースでは、残念ながら「小規模宅地等の特例」を使うことができない。都心ともなれば多額の相続税がかかるため、家を早期に売却して納税資金を工面しないといけないケースも出てくるので注意しよう。

(1)「相続時精算課税制度」を利用していた場合

 「相続時精算課税制度」とは、子どもがマンション資金や子どもの学費などを親から贈与してもらうときによく利用される制度。「相続時精算課税制度」を選択して贈与した場合、2500万円までの贈与は非課税、2500万円を超えた分も一律20%の贈与税で済む。ただし、将来、相続が発生したら、相続財産にこの制度を利用して生前贈与された財産を加えて相続税額を計算し、精算することになる。原則として60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子または孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる。

 たとえば、亡くなった人(親など)の生前に「相続時精算課税制度」を使い、子などに2500万円分の実家の宅地等を贈与したとしよう。2500万円以内なので贈与した際に贈与税はかからないが、贈与した人が亡くなった際、贈与した宅地等は相続財産に加えることになる。しかもこのとき、生前に贈与された2500万円分の宅地等はすでに亡くなった人の所有ではなくなっているので、「小規模宅地等の特例」は適用されない。

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(2)二世帯住宅にまつわる間違い

 二世帯住宅でよくあるのは、宅地等は親が所有したまま、家は親と子が資金を出し合って新築するパターンだ。

 この場合、家の登記には2つ方法がある。ひとつは1棟の建物として登記し、負担した資金の割合に応じた「共有持ち分」とするもの。もうひとつは、家を完全分離型(玄関などすべて別々で建物内で行き来できないもの)として、マンションと同じ「区分所有」の登記をするもの。

 注意が必要なのは、後者だ。完全分離型で区分所有にすると、親が所有する宅地等のうち、子が区分所有する建物の敷地にあたる部分(二世帯住宅全体の床面積のうち、子が区分所有する部分の床面積に割合に応じて按分)は、親が居住する宅地等にはあたらないことになり、「小規模宅地等の特例」が受けられない。

 また、親が居住する宅地等についても、子は別世帯として生活しているはず(生計を一にしているわけではない)なので、これまた「小規模宅地等の特例」の要件から外れる。

 その結果、「区分所有」の登記をした二世帯住宅は、敷地全体に対して通常の評価額の相続税がかかってくることになるのだ。

 一方、二世帯住宅でも、家が「共有持ち分」の登記であれば、「小規模宅地等の特例」が受けられる。

 このように、登記の仕方によって「小規模宅地等の特例」の適否が変わってくるので注意が必要だ。もし、相続前に「区分所有」であると気づいたら、税理士などと相談のうえ「共有持ち分」にできないか検討してもいいだろう。

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(3)「家なき子」の要件変更にも注意

 平成30(2018)年4月1日から、「小規模宅地等の特例」のうち、いわゆる「家なき子」の要件が大幅に改正された。

 「家なき子」というのはもともと、亡くなった人に配偶者も同居している相続人もいない場合、3年以上、"自分の持家に住んでいない親族(=家なき子)"が相続すると「小規模宅地等の特例」が適用されるケースのことだ。

 この要件、何気なく読み飛ばしてしまいがちだが、ポイントは「自分または配偶者の持家に住んでいない」と「親族」の2点だ。

 たとえば、自分や配偶者の持家に住んでいても、所有名義を別の身内や同族会社などに移せば「自分または配偶者の持家に住んでいない」という条件をクリアできる。

 また、「親族」とは亡くなった人の6等身以内の血族および3等身以内の姻族のことであり、孫も含まれる。孫は普通、親(亡くなった人からみれば子)の家に住んでいるので、「自分または配偶者の持家に住んでいない」。相続には遺言による贈与(遺贈)も含まれるので、亡くなった人が自宅を孫に遺贈することにすれば、条件をクリアできるのだ。

 こうした税法の規定の“隙間”をついて、「小規模宅地等の特例」を使おうとするケースが出てきたため、国は平成30年4月1日から要件を大幅に変更することにしたのである。

 具体的には、過去3年間、3親等内の親族などの所有する家屋に住んでいた者、そして、相続開始時において住んでいる家を過去に所有していたことのある者は「家なき子」の範囲から除くことになった。つまり、持家を親や同族会社に買い取ってもらって住み続けるといったケースや、孫に遺贈するケースは認められなくなった。

 行き過ぎた節税対策を封じ込めるものだが、これまでは可能だった「小規模宅地等の特例」が使えなくなるケースとして注意しておきたい。

「配偶者」以外は10ヵ月間、所有・居住し続ける必要あり

 なお、問題なく「小規模宅地等の特例」を利用できる場合でも、相続した実家を売却するにあたっては注意点がある。

「小規模宅地等の特例」の適用を受けるためには、原則として、その特例の対象となる宅地等に相続税の申告期限(相続から10ヵ月)まで住んでいたり、所有したりしていないといけない。これを保有継続要件、居住継続要件と呼ぶ。

 うっかりこの期限前に相続した宅地等に住まなくなったり、売却したりすると、相続時に遡って「小規模宅地等の要件」が受けられなくなり、多額の相続税を支払わなくなる可能性がある。

 では、申告期限前に売買契約を結び、申告期限後に引き渡す場合はどうだろう。

 不動産の売買では、引渡日に所有権が移転すると考え、また契約書にもそのように明記するのが一般的である。そのため、売買契約をたとえ申告期限前にしていたとしても、引き渡しが相続税の申告期限の後であれば、「小規模宅地等の特例」の適用は受けられる。

 ただし、亡くなった人が住んでいた宅地等を配偶者が相続した場合は、この要件が不要になる。つまり、配偶者であれば相続した実家を、相続後にすぐ売却してもこの特例の適用が受けられるのだ。

 配偶者はこのほか、亡くなった人が所有し、亡くなった人と生計を一にする親族(子や孫など)が住んでいた宅地等を相続した場合にも、「小規模宅地等の特例」が受けられる。

 この場合についても、相続税の申告期限まで所有している必要はない(他の宅地等について「小規模宅地等の特例」を受けていないことが前提)。

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相続する前に、特例の適用条件をチェックしておくと安心

 実家を相続するときはなるべく「小規模宅地等の特例」を使いたい。

 しかし、使えないケースも多いので、その場合は多額の相続税を払う可能性がある。

 手持ちの現金が少ないときは、実家を売却して納税しなければならないこともあるので、相続が起きそうになったら早めにチェックしておこう。

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 なお、実際に実家を売却する際は、複数の不動産会社に査定を依頼して、じっくりと相場を把握し、焦らずに販売していくのがいいだろう。その際、「不動産一括査定サイト」などを活用すると、複数の会社に簡単に査定を依頼できるので便利だ。

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