マンションなど不動産を売却するなら「ホームステージング」の活用を考えてみてはいかがだろうか。「売却期間を半減できる」「査定額が高くなる」などのメリットがある。ホームステージングのテクニックをプロに聞いたので、一挙公開しよう。
売却不動産をモデルルームのように演出
ホームステージングとは、一言で言えば売りに出すマンションに家具や生活雑貨を設置する演出手法のことだ。ここ数年、大手不動産仲介会社が売却時に取り入れるなど、急速にホームステージングの普及がすすんできた。
業界団体「日本ホームステージング協会」(東京・江東区)の調査では、売却不動産にホームステージングをすると、平均130日で売却できた。これは通常の販売期間の約半分だ。
売却価格は平均査定金額から約0.5%増加したという。中古不動産では、「実際の成約価格は、売り出し時の価格から5%前後下がるのが一般的」(都内の不動産コンサルタント)というから、0.5%の価格アップであっても、実質的はそれ以上のメリットがある。
【参考記事はこちら】
>> ホームステージングを使って査定価格が大幅アップ! 家具や生活雑貨をレンタルして置くだけで、売却期間が半減し、売却価格も高くなる効果も!
ホームステージングの5カ条を公開
では具体的には、どういったやり方が効果的なのだろうか。ホームステージング専門会社であるホームステージング・ジャパン(東京・品川)に聞いてみた。同社によるとホームステージングを成功させるためのポイントは次の5つだ。
- ホームステージングの必須5カ条
- 1.「広く」「明るく」みせる
- 2.生活の「シーン」を想像させよう
- 3.色を効果的に使う
- 4.三角を意識すればそつなくまとまる
- 5.水回りは必ずステージングしよう
一つずつ解説していこう。
1.「広く」「明るく」みせる
「広さ」と「明るさ」は誰にでも好印象を与えるために必要な要素だ。
ホームステージング・ジャパンが行った調査によると、内覧後にいい印象として残っていることとして、「明るさ(49.6%)」、「広さ(48.4%)」をあげた人が約5割にのぼったという。
中でも重要なのは、内覧者がリビングに入った瞬間に広さや明るさを感じさせること。そのための工夫として、物件にあった適切なサイズの家具を配置することが大切になる。
実例を見てみよう。
写真① 幅200cmのソファとアームチェアを置いてもまだ部屋には余裕があることをアピールした例。写真提供:ホームステージング・ジャパン、以下同。
写真② コンパクトなLDでも、小さすぎる家具を置くのは逆効果
写真①の部屋はファミリータイプの間取りでLDの広さがポイントになる。そのため幅200cmのソファとアームチェアを置いてもまだ部屋には余裕があることをアピールする。あえてソファを壁側に配置し、テレビボードは置いていない。このまま住むとなると実用的な配置とは言い難いが、見栄えを優先しているのだ。
広い部屋をより広く見せるためには、導線や視界を家具で遮らないようにすべきだろう。
また、写真②はLDがコンパクトなタイプのマンションだ。広さに自信がないと、実際以上に狭く見えないよう小さな家具でスペースを確保したくなる人が多い。しかし、このケースで適切な大きさの家具を置くことが大切になる。なぜなら、内覧者は「このサイズの家具でも十分だな」と実感することで購入意欲が高まっていくからだ。小さすぎる家具を設置してしまうと、「家具が置けない狭さ」と、失格の烙印を押されかねない。あくまでも適切な大きさを守ろう。
また、写真②の部屋のように、ダイニングスペースとリビングスペースの距離が近い場合は、ラグを使ってスペースの区切りをはっきりと認識させることで広く感じさせることができる。
また、ソファやダイニングテーブルは明るい色を使用するようにし、濃い色の家具を使用するならディスプレイや素材を工夫し、部屋全体が明るく見えるよう調整しよう。
2.生活の「シーン」を想像させよう
ホームステージングで大切なのは「そこでどんな暮らしができるのか」と具体的な生活をイメージさせることだ。そのためにはストーリーを見せるのが効果的。物件の立地条件・価格帯・間取りから購入層を考え、設定したターゲット層にとって、「憧れの生活」をイメージさせれば購買意欲が高まる。
内覧者はインテリアに興味がある人ばかりではない。使い勝手を細かく確認する人は少ないので、とにかく部屋に入って感じる印象を第一に考えよう。あくまでわかりやすい演出が肝心だ。あまり個性的すぎるスタイルは避けよう。
設定したターゲット層の中の8割に好まれれば十分。腹八分を意識して、自分のこだわりは抑えよう。
例えば、キッチンなら、きれいにしておくのは当然だが、何も置いていないのも不自然。写真③のように果物や高級食器を見えるように置いておくといい。また写真④のように、リビングのテーブルには、ティータイムのようにティーポットを置いたり、高級なお菓子を置いておくと、素敵な暮らしをイメージしやすいかもしれない。
写真③ 女性が必ずチェックするキッチンには、さりげなく果物を置いておく
写真④ 家族だんらんをイメージできるよう、ティーポットやお菓子を置いておくといい
3.色を効果的に使う
「色彩」は視覚情報の80%を占めていると言われる。そのため、ホームステージングでは色の使い方はとりわけ大切だ。
想定したターゲット層の気に入る空間を表現するためにはどんな色が最適なのかを意識し、部屋ごとにポイントとなるカラーを決めよう。あくまで統一感を損なわないようにするのが王道だ。
小さな子どものいるファミリー層なら、ピンクやオレンジなど「暖色系」が有効。写真⑤のように黄色を配置することで、温かみが感じられる。
写真⑤ ファミリー向けのプラン。こちらはポイントカラーとして黄色を採用。部屋の広がりを感じやすくなる
ディンクスや子育てが終わったファミリーは、青やグリーンなど「落ち着いた色」を好む傾向がある。写真⑥のように、部屋全体が締まった感じがするだろう。
写真⑥ ディンクスか少人数のファミリー向けプラン。空間に統一感を出すために、ポイントカラーとして青を配置。視線を大きく動かす効果もある
また、色の配置も大切になる。一般に人は同じ色を目で追うといわれていて、部屋の各所に統一したポイントカラーを配置して、内覧者が無意識に部屋全体を見回すように誘導する。空間に統一感を出すだけではなく、視線が大きく動くことで、部屋が広く感じられる効果がある。
4.三角を意識すれば、そつなくまとまる
家具や雑貨を三角形に配置するディスプレイは「三角構成」と呼ばれ、安定感があり、簡単にまとまりが出せる。写真⑦は三角構成の典型例だ。遠くから視線が誘導され、そこに「生活シーン」を想定した雑貨などでディスプレイを作れば内覧者の興味を惹くことができる。
写真⑦ 三角構成を作ればまとまりを演出しやすい
その他にも、写真⑧のように、似たような形や色を繰り返し見せるという「リピート構成」も視線を集める効果がある。見ていてリズム感が出てくるので、自然と部屋を見てしまう効果がある。また、視線がとまるポイントを要所に作っておくことで、空間にメリハリがでる。
写真⑧ リピート構成は視線を集める効果がある
「三角構成」「リピート構成」ともに簡単にプロのような演出ができるので、覚えておこう。
5.水回りは必ずステージングしよう
家のなかでどこをステージングするか迷う人も多いようだ。リビングは必須だとしても、寝室やキッチン、ベランダなどどこまでやるかは人それぞれだ。建物ごとにセールスポイントは違うので、周囲のアドバイスも聞きながら、2.で取り上げたターゲットを意識して決めよう。
それでも水回りだけは必ず、ステージングするようにしよう。中古物件の内覧者は、水回りの清潔さを気にする傾向が強い。リフォームやクリーニングをしていても、中古物件を購入する際、「痛みやすい水回りが不安」というマイナスイメージがあるのだ。不安を払拭するための、ひと工夫が必要となる。
写真⑨のように、明るい色のタオルでホテルライクな清潔感を演出したり、植木鉢で爽やかさと健康的な印象を与えたりするだけで、簡単に生活感を消すことができる。特に風呂やトイレは家具の設置が必要ないため、簡単にステージングできる。
写真⑨ 風呂は、植木鉢で爽やかさと清潔感を演出するといい
内覧者のマイナスイメージをプラスイメージに変えられれば、ホームステージングの効果が存分に発揮できる。水回りは必ずホームステージングしよう。
最低限のリフォームとの組み合わも効果的
先述の通り、ホームステージングは各種、不動産会社が取り入れている注目の手法だ。専門会社に頼めば20万円くらいから導入できる。会社によっては、経験豊富なコーディネイターが多くの事例をもとに最適なプランを提案してくれるだろう。個別の要望も聞いてもらえるので、不動産売却時に時間や手間がかけられない人は専門家に頼むといい。
本稿で紹介したテクニックを用いれば個人でも可能な点は多い。新たに購入しなくても所有する家具や雑貨だけでも、ある程度の演出は可能だ。積極的に取り入れてみよう。
また、あまりにも水回りなどが汚れている場合は、その個所だけリフォームしてもいい。汚れている個所は目につきやすいだけに、ポイントを絞ってリフォームすることで、ホームステージングの効果がより高まるだろう。
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