ワンフロアのオフィスで社内・グループ内でのコミュニケーションの活性化を目指す

霞が関や虎ノ門にも面した東京都心の新たなランドマークの一つ、日比谷フォートタワー。その24階、ワンフロアの全てを占めるのが化学大手・三洋化成工業の東京支社だ。関連会社分も含め、5フロアに分散していたオフィスを統合し、2022年3月に業務を開始した。

フロア面積は減少しても満足度は上昇。新しい働き方への転換を促進する画期的なオフィス見通し、風通しの良いオフィスフロア。デスクと席を固定しないフリーアドレス制

日比谷フォートタワーの高層階は東西方向に長い2380平方メートル(720坪)ものオフィス空間を持つ。これをほとんど間仕切りすることなく生み出された新たな東京支社は、長辺90メートル、短辺20~30メートルのそれぞれを端から端まで見通すことができるようにデザインされた。そこに立ったときの視覚的・心理的な開放感は非常に大きく、日比谷・新橋・虎ノ門かいわいという伝統あるオフィス街にいることを忘れるほどだ。

「オフィスが本当に変わりました。実はフロア面積だけを見れば、前のビルにいたときの5フロアの合計の75%程度と小さくなっているのですが、狭くなったとは全く感じられません」。そう笑うのは、三洋化成工業経営企画部の嶋津佐智子主任。東京支社のオフィスの移転・新設に取り組んできたプロジェクトチームのメンバーの一人だ。

フロア面積は減少しても満足度は上昇。新しい働き方への転換を促進する画期的なオフィス三洋化成工業 経営企画本部 経営企画部 主任 嶋津佐智子氏

「ワンフロアのオフィスに移ることを受けて社内・グループ内でのコミュニケーションの活性化も目指していたのですが、期待していた以上の成果を感じています。以前は別の部署、別の(関連)会社が別の階、別の部屋で働いているという形だったのが、今は他の部署、他の会社の動きがよく見えますから」(嶋津氏)

三洋化成工業は化学分野のB2Bの素材メーカー。界面活性剤や高吸水性樹脂を軸とした多様なパフォーマンスケミカル(機能化学品)製品は、紙おむつからIT機器、自動車、航空機にまでさまざまに用いられており、そのため、幅広く数多い取引先企業を持つ。

本社や研究所を京都市に構え、国内外の各地に工場や営業所、関連会社を持つ同社にとって東京支社はまず、多彩な業種に広がる取引先との接点となる国内最大の営業拠点であり、さらに、アジアや北米で展開するグローバル事業の中核でもある。

フロア面積は減少しても満足度は上昇。新しい働き方への転換を促進する画期的なオフィス左が4人掛け、テーブル付きの“ファミレスシート”

そのため、日比谷フォートタワーの新オフィスには東京支社内の各部門だけでなく、関連会社4社も入居しているのだが、各部門・各企業の間は、天井まで届かない収納スペースや共用ユーティリティーなどで緩やかに区切られているのみ。これによって、先の嶋津氏の言葉にもある通りの見通しの良さが実現した。これは、“風通しの良さ”と言い換えてもいいかもしれない。

この斬新さと機能を両立させたオフィスはどのようにして出来上がったのか。次ページからは、オフィス移転プロジェクトチームが掲げた「3S」というコンセプトとその狙い、もたらされた効果について詳しく紹介する。