グループ企業間の統合や働き方改革、丸の内活性化を契機に本社のありようを見直す

「丸の内の大家さん」としても知られる総合不動産大手、三菱地所。そのグループにおいて、オフィスビルや商業施設の運営・管理から地域単位のエリアマネジメント・まちづくりまでを幅広く手掛けるのが、三菱地所プロパティマネジメント(以下、MJPM)だ。PM会社として日本最大級で、受託物件は国内外で200棟以上に及び、受託面積は計1000万平方メートル超、入居するテナントは5300社に及ぶ。

「居ながらリニューアル」で、丸の内の街並みまで変えた。街と一体となった2棟にまたがる本社オフィス<br />エントランス。国産間伐材から作られるCLT(直交集成板)をオフィスの内外装・造作家具に多用

MJPMの本社オフィスは、同社が三菱地所と共にまちづくりを担い、ハイブランドの路面店が居並ぶ丸の内を代表するストリートとなった丸の内仲通り(以下、仲通り)にある。そして、そのありようは少し変わっている。仲通りを挟んで皇居側に立つ丸の内仲通りビルと東京駅側にある丸の内二丁目ビルという2棟のビル、それぞれの2階に本社機能があるのだ。

ビルの建て替えと超高層化が進む丸の内エリアにあって、この二つのビルはいずれも築60年に迫る“ビンテージビル”であることも特徴的だ。片や1963年竣工の旧三菱電機ビルヂング、こなた64年竣工の旧三菱重工ビルヂング。その間にあって平日の昼間、歩行者天国となっている丸の内仲通りに立って眺めると、“時間に磨かれた建築”の価値がよく分かる。

この特色ある本社オフィスにリニューアルの動きが出たのは、コロナ禍に先立つ2019年ごろのこと。その要因について同社業務企画部兼経営企画部の平野知也参事は次のように語る。

「14年以降のグループ会社間での経営統合や三菱地所からの業務移管、受託物件の増加によって業務の幅がますます広がり、社員の数が増えたことがまず大きなきっかけとなりました。また、積極的なキャリア採用もあり、異なるバックボーンを持つ社員が増えたことで、社内のコミュニケーション活性化が課題になりました。また、再開発によってビルの低層階が店舗となり土日を含めて多くの来街者でにぎわう街となった一方、日本有数のオフィス街でありながらオフィスや働き方が見える場所が減ってしまったことに対する、まちづくりを担う当社ならではの課題感もありました」

「居ながらリニューアル」で、丸の内の街並みまで変えた。街と一体となった2棟にまたがる本社オフィス<br />時間に磨かれたビンテージビルディングのオフィス内装をモダンに刷新

もう一つ、働き方改革の進展も本社オフィスのありように見直しを迫っていた。同社働き方改革推進部の中村弘美推進ユニット長は語る。
「16年から働き方改革に乗り出して長時間労働の是正や女性の働きやすさの向上などを目指し総務や人事セクションと共に新たな制度を作ってきたのですが、いざ本社の中を見回してみると、部署ごとに固定式の個人デスクが島になりそこに上司がいて袖机や文書キャビネットが並び……という具合で、働く環境は旧態依然でした。働き方改革に追い付いていなかったんですね」

さらに、本社オフィスの古さを感じさせる“事件”も起きた。日本でラグビーワールドカップが開催された19年の暮れ、日本代表チームのパレードが丸の内仲通りで行われ、5万人もの観客が集まったときのことだ。

一体どんな事件が起きたのか。次ページでは、その事件がMJPMにもたらした大きな変化について詳しく紹介する。