業務拠点としての機能性と人の居場所としての快適性を両立

オフィスづくりのプロが、自ら働く場をつくる──誕生した「Studio Be」は、理想のオフィスにして最強の共創空間アーチ型の「おうち」の屋根の下で、リラックスしながら仕事ができる

紺屋の白袴、あるいは医者の不養生──いずれも、高度な技術によって顧客に応えているプロが、その技術を自分自身には活用できていないことを示す言葉だ。では、オフィスづくりのプロたちの場合はどうなのだろう? 彼ら自身が働くオフィスは、さて、どこまで新しく、どこまでニーズが満たされているのだろうか?

こんな、多少の意地悪さも混じった好奇心から、富士ビジネスの京橋オフィスを訪ねてみた人は、驚きと納得の両方を味わうことになる。由緒ある都心に立つビルの18階に上り、「Studio Be」と名付けられたフロアのエントランス部分を目の当たりにすると、「おぉ!」「うわぁ……」といった声が思わず漏れ出てしまう人も少なくない。働く場としての心地良さがすぐに感じ取れるからだ。

オフィスづくりのプロが、自ら働く場をつくる──誕生した「Studio Be」は、理想のオフィスにして最強の共創空間オフィスに入ってすぐ左には、しゃれたカウンターバーを配置

この印象は、エントランスから先へと歩みを進めていくと、さらに深まる。通常のオフィスビルとは異なるダイナミックなデザインと開放感のある天井。その天井の高さが、中央に設けられたアーチ型の「おうち」によって親しみやすい空間へと導かれている故の安心感。この「おうち」があることでオフィス全体の広がりが実感できる開放性と、緩やかに景色を切り替え、落ち着ける場所を生み出すプライバシー性が共存している──。

こうしたさまざまな特性を同時に実現させることは難しいのだが、Studio Beではそれが見事に形になっている。そのため、業務の拠点としての機能性と人の居場所としての快適性が両立していることが、見れば見るほど、あるいは居れば居るほど、分かってくるのだ。

オフィスづくりのプロが、自ら働く場をつくる──誕生した「Studio Be」は、理想のオフィスにして最強の共創空間随所にアートやグリーンが配される。写真は「おうち」の壁に描かれたウォールアート

「エントランスから歩いていくと、中央にある『おうち』やブース、あるいは家具や床の素材の変化によって、オフィスの中で緩やかに景色が変わっていきます。これは、次の場所に進んでいくことへのワクワク感と、幅広い用途に対応できる多様なスペースを生み出すことが狙いでした」

そう明かすのは、Studio Beを手がけた富士ビジネス オフィス環境営業本部のデザイナーを務める村松麻紀子氏だ。そもそもStudio Beのあるミュージアムタワー京橋(MTK)という建物からして、建築と街、そして人のサステナビリティの向上を目指す斬新なビルであり、オフィスを新設することになった18階もまた「個性的な空間」だったという。

「ビルの個性的なデザインを生かしたかったので、華美な装飾はせず、本物の素材やアートを適切な場所に取り入れることによって、ここでしかできない空間、ここにしかない空間を目指しました。左官による壁や木のフローリング、磁器タイルなど、素材感あふれる仕上げを積極的に取り入れています」

Studio Beには「ライブオフィス」の名が冠されている。次ページではその役割や機能について詳しく説明する。