働き方を体感する、400坪の「ライブオフィス」

コストやメンテナンスの面からオフィスには採用されることの少ない仕上げや建材までを取り込んだ背景には、Studio Beが同社にとって自社オフィスにとどまらない「ライブオフィス」だという背景もある。ライブオフィスとは、富士ビジネスのつくるオフィスを来場した顧客に実際に体験・体感してもらう場だ。以前のオフィスより増やした床面積は、この体験・体感の場の充実と顧客との対話の場を増やす狙いがあった。

オフィスづくりのプロが、自ら働く場をつくる──誕生した「Studio Be」は、理想のオフィスにして最強の共創空間セミオープンのコラボレーションスペース越しにガラス張りの会議室が見える。いつも打ち合わせをする社員や来客でにぎわう

また、京橋に先立ってライブオフィスとなった丸の内本社が、企業の本社機能を果たすためのオフィスづくりの見本になっているのに対し、京橋では新しい働き方に適応する共創空間のオフィスと位置付けられている。同本部営業課長の貞方琢弥氏は次のように語る。

「京橋のライブオフィスがオープンしたのは2019年の10月。すぐ後にコロナ禍が始まって日本企業でもリモートワークが広がるなど、仕事をする場所についての考え方が大きく変わってきたのですが、それ以前からの課題である働き方改革やDXに対応するためにも新しいオフィス環境が必要だという意識は、多くのお客さまに一貫してありました。開設から3年がたってもStudio Beの意義は薄れることなく、むしろウィズコロナ、ポストコロナが見えてくるにつれ、ますます高まっていると感じています」

オフィスづくりのプロが、自ら働く場をつくる──誕生した「Studio Be」は、理想のオフィスにして最強の共創空間ディスプレイや植栽で居心地のよさを感じる明るいミーティングスペース

一時は変則的に運営していたライブオフィスの案内もすでに再開しており、見学の申し込みは順調に伸びている。見学者の滞在時間も増え、「オフィス内をぐるりと見て回って終わり……ではなく、1週間ほどかけて何度も来社して、じっくり体験していくというお客さまも多い」のだという。

Studio Beが、自分たちの働く場であり、顧客に体験してもらう場でもあることについては、同本部エンジニアリング部プロジェクトマネジャーの望月康太氏もこんなふうに考えている。

「オフィスづくりでは、どんなハードをつくるかに加えて、その前提となる『どんな運用をするか』というテーマもある。デスクはフリーアドレステーブルに、打ち合わせはオープンスペースで、業務スペースには自分のかばんは持ち込まない……といった、従来の日本企業とは違う運用をStudio Beでは導入していて、われわれ自身が体感しているからこそ、お客さまに合った具体的な提案ができるんです」

オフィスづくりのプロが、自ら働く場をつくる──誕生した「Studio Be」は、理想のオフィスにして最強の共創空間執務スペースに自分のかばんは持ち込まない。人が活発に行き来できる、本来のABW (Activity Based Working)の姿だ

また、同本部ワークスタイルデザイン部長の久保田慎吾氏は、「お客さまのオフィスづくり担当チームが定例会をこのStudio Beで開いたり、普段とは異なる環境で発想・アイデアを出し合ったり、新しいオフィスを実際に体験してもらう取り組みもどんどん行っています」と明かす。

ワークスタイルデザイン部は、オフィスづくりの基本となる働き方についての把握や分析、提案を手掛ける部門。「お客さまにとっても当社にとっても、新しいオフィスをつくること自体が主目的ではなく、成果を上げるための手段です。オフィスでの働き方、過ごし方のさまざまな例を見てもらって、お客さまに自分たちに合ったイメージを具体化してもらう場がライブオフィスなんです」と、久保田氏は語る。

このように、京橋ライブオフィス Studio Beは、富士ビジネスにとってのみならず、日本企業のオフィスづくりにも非常に大きな役割を担っている。この点について同社代表取締役社長の河田隆太郎氏にも、考えをStudio Beでじっくり聞いてみた。