実装にこだわり
行動変容を促す

「デジタル実装加速化プロジェクト」の特徴は、“実装”にこだわった点にある。単発の実証実験ではなく、先進のデジタル技術を本当に使いこなして成果を上げるまで、民間事業者・県内の事業者・行政が、三位一体でじっくり取り組むプロジェクトなのだ。

「デジタル技術の良さは、データに基づいて行動変容を起こせること。そのため、目に見える変化が起こるまで長く寄り添っていく体制を整えました。事業者同士でナレッジを共有して切磋琢磨するために、定期的な勉強会の開催も必須としました。われわれ行政は、民間事業者と県内の事業者の間に入って、お互いの要望を聞き入れながら調整を行っていく“補助エンジン”の役割を担います」。そう説明するのはデジタル戦略局の高岡司主幹だ。

では実際に、どのようなデジタル実装が展開されているのか。西予(せいよ)市野村町で実施されている「植物生体情報による農業生産ノウハウDX」を見てみよう。

愛媛を“デジタル実装の聖地”に~デジタル技術で 地域課題を解決する企業を公募

プロジェクトメンバーは、熟練生産者のフローラルクマガイと新規就農者。フローラルクマガイは超高糖度トマト「うるるんトマト」を生産しブランド化に成功している。ただし経験と勘に基づいて生産を行っているため、他者へのノウハウの伝達が難しかった。

この課題を解決するのが、愛媛大学発のベンチャー企業「PLANT DATA」である。同社が持つ植物生体情報計測技術を活用し、生産ノウハウをデジタル化した。具体的には、“植物画像診断ロボット”と“光合成チャンバー”からデータを取得、フローラルクマガイの解釈を加えて、新規就農者に提供するシステムを構築したのだ。