ある自動車ディーラーのケースである。このディーラーでは店頭での接客業務に課題を感じていた。車で来店した顧客を待たせることなく満足度を高め、かつセールス担当者の業務を効率化できないかと考えていたのだ。
自動車ディーラーの経営者との店舗改革プロジェクトを通じて出てきた課題に対するソリューションとして、電通と電通グループのITサービス企業である電通国際情報サービス(ISID)が共同で、店頭に設置したカメラで来店した車のナンバープレートを自動認識し、事務所のパソコンに顧客情報を表示、来店者リストを自動作成できるシステムを構築した。また、ナンバープレートの情報を基に車種や購入日、メンテナンス履歴などの顧客情報を一元管理できるようにした。これらの仕組みを導入することで、来店した顧客を待たせることなく、かつセールス担当者の業務の効率化も実現することができた。
データ活用やシステム刷新も「ありたき姿」からバックキャスティングする
「店頭でお客さまを待たせることがなくなり、来店者リスト作成などの業務も効率化できたのでクライアント企業には満足していただけたのですが、蓄積された顧客情報をどう活用するかという新たな課題が出てきました。一方で、経営層は顧客体験をもっと良くしたいという課題を持っていらっしゃいました。そこで、ISIDと電通が共同で、顧客体験の革新に向けたDXをご提案したのです」。そう振り返るのは、ISID上席執行役員エンタープライズIT事業部長の中村優一氏である。
中村優一氏
両社はクライアント企業にヒアリングしながら、顧客にとってのペインポイント(苦痛や不満など)を抽出、顧客体験の「ありたき姿」を描き出した。そして、それを実現するための業務プロセス改革とシステム改革を進めていった。
「データを蓄積するためにシステムを刷新したいというご相談が多いのですが、何のために蓄積したいのか、つまり企業としてどうありたいのかというビジョンや、それに近づくためにどんなデータをどう活用したいのかという具体的な方針が定まっていないケースがよくあります。本当に価値のあるデータ活用とシステム基盤構築のためにも、変革アーキテクチャーをデザインすることは欠かせないと思います」と中村氏は指摘する。
このようにデータ活用やシステム刷新を入り口として、電通とISIDが本格的なBX、DXの支援に関わるケースが増えている。例えば、マーケティング領域からDXを始めたいという企業があった場合、マーケティング部門にはデジタルマーケティングに強い電通や電通デジタルが、IT部門にはISIDがカウンターパートとして入り、電通が経営層や事業部門と連携しながらDXプロジェクト全体をマネジメントするといったケースもある。
「データを活用する側、システムやデータを管理し守る側、そして企業全体のことを考える経営層では、優先順位や意識、使う言葉にもどうしても違いが出てきます。それぞれの立場をよく理解する電通グループが入って一緒にプロジェクトを進めることで、コミュニケーションの行き違いやコンフリクト(摩擦)を解消しながら変革を進めていくことができます」(中村氏)
電通の歴史は、広告やコミュニケーションの世界で、異なるスキル、多様なバックグラウンドを持つ人たちを“生活者目線”や“志”でつなげ、人の心を動かし、新しい価値の創造を目指してきた歴史でもある。グループに脈々と受け継がれているそうした無形資産が、独自の「ホリスティック・トランスフォーメーションモデル」によるBX、DXを完遂する力の礎となっている。
「クライアント企業の皆さまと、一つの変革を、また次の変革へとつなぎ、クライアント企業の事業の成長に貢献していきたいと思います」。古平氏は、そう決意を語った。
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