企業が情報や選択肢を提供すれば、社会のサステナビリティが加速する
SXの支援に関して、電通では部門横断のバーチャル組織で対応に当たっていたが、2023年1月に専門部署のサステナビリティコンサルティング室を設立した。同室にはBXやDXの専門家に加え、クリエイティブやPR、IR(投資家向け広報)、デジタルやITなどの多様な専門人材がグループ各社から集まっており、サステナビリティ経営に関連するソリューションをワンストップで提供できる体制を整えている。
サステナビリティが社会課題であることは言うまでもないが、企業としてはその課題解決に向け自社や取引先だけでなく、生活者の意識や行動の変容も促し、社会のSXを共に推進していく必要がある。そこで電通サステナビリティコンサルティング室では、生活者が実際にどのような行動を取っているのかを把握するために23年秋、「生活者のサステナアクション調査」を行った。
調査結果から分かったのは、「サステナビリティに配慮した生活をしたい」と思う人が約半数を占め、日々の生活において自分一人でもできる「分別」「リサイクル」など何らかの行動を取っている人は9割に達することだった。一方、「サステナブルな行動につながる仕組みがない」「どんな行動が(社会や環境に対して)どう良いのかが分からない」といった理由から、サステナブルな行動を取っていない人がいることも分かった。
この調査結果について、サステナビリティコンサルティング室シニア・ディレクターの三笘亜樹氏は、「生活者だけでは解決できない部分が多く、企業が情報や選択肢などを提供することでサステナビリティアクションが加速することがうかがえます」と解説する。
また、電通グループの一員としてデジタル時代の事業革新を支援しているISIDビジネスコンサルティング(isidbc)*代表取締役社長の寺嶋高光氏は、「SXやGX(グリーントランスフォーメーション)といった大きな流れの中で、非財務情報の開示やマテリアリティー(優先的に取り組む重要課題)の特定といった動きが企業に広がっていますが、生活者の行動を変え、社会を変えるムーブメントを企業がリードするところまでは至っていません」と付け加える。
*ISIDビジネスコンサルティングは2024年1月1日、親会社である電通国際情報サービス(ISID)と統合し、新たに「電通総研」としてスタートする。
では、そうしたムーブメントを企業はどう生み出していけばいいのだろうか。