バックオフィス業務が今、大きな課題に直面している。労働力人口の減少に伴う人手不足が顕在化しつつあり、業務の継続性が懸念されている。課題解決のために業務集約やBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービス導入に取り組む企業も増えているが、早くも成功する企業とそうでない企業とで明暗が分かれているようだ。ポイントはどこにあるのか。大手監査法人のアーンスト・アンド・ヤング(EY)のメンバーファームの一つで、業務集約・BPOサービスについて豊富な実績を誇る、EYビジネスパートナーのアソシエートパートナー、横井太一氏に解説してもらった。
「人手不足」で顕在化する“キーマンリスク”
新型コロナウイルスの感染拡大により、リモートワーク環境の整備など、働き方改革が一気に進んだ。
「コロナ禍で、バックオフィス業務の多くの課題が浮き彫りとなり、業務集約・BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスの活用が注目されました。直近でも引き合いが増えています。昨年と比べると、相談件数は同時期比で5倍以上に増えました。アフターコロナで、企業側の悩みは減るどころか、むしろ逼迫しています」と、EYビジネスパートナーのアソシエートパートナー、横井太一氏は説明する。
昨年に比べ、相談件数は5倍以上――。なぜ、これほど急増しているのだろうか。
「人手不足の問題が徐々に顕在化、深刻化しているからだと思われます。近い将来、労働力(生産年齢)人口の減少が、企業の大きな経営リスクとなり、インパクトを与えるのは明らかです」
日本の総人口は2021年に約1億2600万人だったが、60年には約9300万人まで減少すると予測されている。さらに高齢化率(65歳以上の人口の割合)は21年の29%から、60年には38%に達するという。
「約40年後、労働力人口は現在の約3分の2に減ります。これが何を意味するかといえば、社員が退職すると、代わりの人を採用しようとしてもできなくなるということです」
特に、最近、多くの企業で顕在化しているのが、特定の人に業務が集中した結果、仕事の進め方などが属人化、ブラックボックス化してしまうという“キーマンリスク”である。
「そもそも経理や税務などのバックオフィス業務は、一部の『仕事ができる人』に仕事が集中する傾向があり、どこの企業でも大きな“キーマンリスク”を内包しています」と横井氏は指摘する。
詳しくは後述するが、特にITスキルのある社員は、職場で独自にExcelなどを用いたワークファイルを作成・使用しているケースが多く、その社員がいなくなると、業務の継続性などに支障を来すことも少なくない。
そこで、次ページ以降では、“キーマンリスク”への具体的な対処法や、ある大手金融機関でExcelワークファイルの標準化を行った結果、チェック箇所を約30分の1に減らすことに成功した事例なども含め、業務集約・BPOサービスについて、さまざまな事例を紹介していく。