医療崩壊の危機、水面下での生徒の感染
緊急事態宣言から2週間。感染ルート不明の陽性患者が過半を占め、いつどこで新型コロナウイルスに感染するか、もはや知るすべはない。検査を受けられるか否かは保健所の判断によるところが大きいが、すでに処理能力を超えており、高熱などの症状が続いても自宅待機しながらの経過観察を余儀なくされている。
この間、日本医師会は医療現場でマスクやガウンが不足し、医療崩壊の危機だと訴える一方、自治体とともに感染の有無を判定するPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査態勢を強化することも表明している。
16日には緊急事態宣言の対象が全国に拡大され、うち先に発令された7都府県を含む13都道府県が特定警戒都道府県に指定された。
学校の教職員の感染や罹患した大学生が各地でクラスターを形成する様子が大きく報道されている。中高生でも罹患した生徒は出ているが、そのことを学校が公表することはない。首都圏の中高一貫校でも生徒の感染が語られているし、全国的に見れば有名進学校でも起きている。水面下では、保護者の間に情報が飛び交っているのだが、問題は、罹患した生徒がいたたまれなくなって退学あるいは転校するような事態にまでなっていることだろう。
前回、首都圏の中高一貫校を含む私立校について緊急アンケートを行った。多くの学校は緊急事態宣言の期間が切れる5月6日~11日の間に学校での授業を再開する見込みで動いている。しかし、日々累積する感染者数を見る限り、あと2週間ほどで本当に通学が可能になるのか、確信は持てないのが現状といえる。
新型コロナウイルス用のワクチン開発は急ピッチで進められているが、少なくとも1年以上かかることは間違いない。他にも、治療薬としてさまざまな医薬品の名前が挙がっているが、すぐに使用できる状況にはなっていない。
在宅療養支援診療所として訪問診療を、地域住民のかかりつけ医として外来診療も行っている「さんくりにっく」(東京・練馬区大泉)院長で内科医の内田義之氏は、新型コロナウイルス感染が疑われるような発熱した患者と日々向き合っている。
内田医師は茨城県の感染症審査協議会の一員で、鹿行地区(鹿嶋市・潮来市・神栖市・行方市・鉾田市)で新型コロナ感染症患者が発生した際、入院の可否の判断をする役割も担っている。
3月5日付で生物医学専門誌『cell』のサイトで公表された論文「SARS-CoV-2 Cell Entry Depends on ACE2 and TMPRSS2 and Is Blocked by a Clinically Proven Protease Inhibitor」に、内田医師は注目した。そこでは、ある既存薬の新型コロナウイルスに対する効果が示唆されていたからだ。論文の筆頭に記されたホフマン氏は感染症で有名な医師である。
日経バイオテク誌のサイトに掲載された記事「東京大がカモスタットの新型コロナに対する臨床研究を計画」では、この薬に東京大も注目していることが記されていた。