「AIネイティブ世代」の登場で変わる子どもたちの学びプログラミング教育の最も分かりやすい成果物がスマホのアプリだろう。2000年代に生まれた「クラウドネイティブ」の中高生が制作したアプリの数々は、ネット上の店舗でリリース(作品公開)されている 写真提供:ライフイズテック

今の小学生の親は、「ウィンドウズ95」が世に出た時に学生・生徒だった層が中核となっている。ICT(情報通信技術)の日進月歩の発達は、文字通り10年ひと昔で新しい世代を生み出している。生まれた時からスマートフォンや各種クラウドサービスが身近にあった2010年代生まれの今の中高生は「クラウドネイティブ世代」であり、次には「AIネイティブ世代」が登場すると、ライフイズテックの讃井康智さんは説く。讃井さんと一緒に2040年代の姿を念頭に置きながら、子どもたちが今後どのような生き方をしていくことになるのか考えてみよう。(ダイヤモンド社教育情報)

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2040年の日本社会で起こること

 2020年から小学校で「プログラミング教育」が必修化されました。実は、その8年前に中学校の技術家庭科で「プログラムによる計測・制御」がすでに必修化されていたことはあまりご存じではないかもしれません。

 10年に一度改訂される学習指導要領は、概ね10年先の社会を見通して教育の内容をアップデートしていく仕組みです。今回、小学生がプログラミングを学ぶようになったのは2030年代以降の世の中を見越してのものなのです。

 現在の情報化社会は「Society 4.0」とされています。狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)に続くものです。国が科学技術基本法で5年ごとに改定している現行の「第5期科学技術基本計画」には、現在の情報化社会の先には、先端テクノロジーで必要な情報に瞬時にアクセスできる「Society 5.0」の姿が描かれています。

 2040年の未来社会では、遠隔医療、多言語自動翻訳、ドローンでの自動運搬システム、環境データによるスマート農業など、産業や生活のあらゆるシーンでネット上のサービスが利用できる「超スマート社会」が構築され、それによって地域間や経済的な格差を解消していこうというシナリオが描かれています。ICTなしには仕事も日常生活も成り立たない時代になっていることは確実です。

 現在の小学生が30歳前後の社会人となっている2040年代の日本は、2020年代とはだいぶ様相が変わっていることでしょう。グローバル化の進展で企業は世界を相手にさらに激しい競争に晒され、産業構造の転換が進み、年功序列や終身雇用は過去のものになっているでしょう。少子高齢化は、財政や年金・保険制度の根幹的な見直しを加速させ、もはや国や大企業に寄り添っていれば安心という考え方は通用しなくなると思います。

 そんな社会で重要になるのが、ICTを日常の道具として使いこなし、情報を適切に収集・活用することのできるスキルです。前回の連載で触れたように、21世紀を生きる子どもたちには「半径50センチの課題」を自ら発見・設定し、解決していく能力が強く求められます。その未来を見据えた時、今こそ1人1人の可能性を最大限伸ばせるよう、子どもの頃からICTを使うだけでなく、ICTで何かを作って課題解決する経験までしておく必要があると考えています。