誰もが「デジタルイノベイター」になる2040年
2021年の子どもたちはクラウドネイティブ世代です。手持ちのデバイスが常時インターネットにつながっているのが当たり前で、自宅でも出先でも、まるで自分の頭脳や体の一部であるかのようにクラウドサービスを活用しています。
分からないことがあれば、即刻その場でGoogleやTwitterなどのSNSを活用して検索します。写真や動画、絵や文章をクラウドに上げてソーシャルメディアで拡散するのはもはや常識です。そしてあと10年もすれば、自ら学習して進化する人工知能(AI)を使いこなす「AIネイティブ」世代の時代がやってきます。
AIが人間を超える「シンギュラリティ」の到来がいわれるほどその進化は速く、現在でも生体認証技術や自動運転技術などが一部で実用化されています。また、将棋の藤井聡太棋士は処理速度の速い自作パソコンを使って、これまでよりもハイレベルなAIとの対戦を繰り返すことで、今までにない打ち手を探究していると考えられています。藤井棋士は「AIネイティブ」の走りといえるでしょう。
Society 5.0が描く2040年の社会では、誰もが簡単にAIなどの高度な技術を利活用できるインフラが整い、誰もが「デジタルイノベイター」になれる時代がやってくると考えています。
ここで言う「デジタルイノベイター」とは、課題を自ら設定して、ICTを活用し社会の課題解決をしていける人のことです。インターネットをはじめとしたICTを自分の頭や身体の一部として上手に使いこなせば、多くの人の知見を活用することも、人間ではできない大量の処理を高速で回すことも、高いクオリティの作品を作ることもできます。また、自分で「半径50センチの課題」に対して創作したアプリも、SNSなどを介して多くの人に届けることができます。ICTを活用すれば、人生経験の少ない若い世代でも、早いうちから大人に匹敵するような社会貢献ができる、最高におもしろい時代が到来しています。
小学校の頃に理科の実験や図工の工作などでわくわくした記憶はありませんか? プログラミングでアプリなどを開発することは、それらよりももっと早く学んだことが形になるのが特徴です。さらに、夢中になって作ったアプリが誰かを喜ばせたり、身近な課題を解決したと分かると、もっと作りたいという気持ちが湧き上がってきて、ますますのめり込んでいきます。
2020年代に行うべき教育とは、そんなわくわくする体験を通じて、1人1人の可能性が最大限伸びる学びを提供すること。そして、2040年に向けて「世界を良く変えられるデジタルイノベイター」を輩出することにあると思います。私の所属するライフイズテックのスローガンである“Why don't you change the world?”には、こうした強い決意を込めています。