大学生向けのイノベーション教育で
新しいアイデアを生む思考法を習得
芝浦工業大学附属中学高等学校で2022年度から始まった高校探究学習では、i.schoolエグゼクティブ・ディレクターの堀井秀之氏が力を入れるイノベーション教育を実践している(第1回参照)。
i.schoolは、新たな製品やサービス、ビジネスモデル、社会システムなどのアイデアを生み出す力を育成するための教育プログラムで、大学生や大学院生に提供されている。それを高校1年次から2年次にわたる2年間で実施し、イノベーションを生み出すプロセスを構築できる人材になるための思考法と実践を学ぶ。
ベースとなるのは、堀井氏が人間の創造性の基本と考える「アナロジー(類推)思考」だ。既存のアイデアの構造的な類似性を見つけ出し、それを応用することで新たなアイデアへとつなげる。そうした思考法の端緒に触れ、プログラムの基礎を学ぶ最初の授業では、「未来の見つけ方」と題して、堀井氏が講師を務めた。
まず、近い将来に実現化し、社会を変えると期待される100の最先端科学技術と、「認知症が当たり前の社会」「あらゆるものにセンサーが組み込まれている世界」など、現代社会の延長線上にありそうなさまざまな未来シナリオを生徒たちに提示した。最初の課題は、最先端技術を活用して、未来社会におけるニーズに応える製品やサービスのアイデアの創出だ。
生徒たちは各人で、シーズ(最先端科学技術)とニーズ(未来シナリオ)をそれぞれ分析し、そこから生まれたアイデア(新しい製品やサービス)を考える。この「ニーズ×シーズ発想」(図1)は、i.schoolが体系化した新規性を生み出すための六つのアプローチの一つだ。
探究学習をサポートする教員の一人、山岡佳代氏は「最初からある程度ニーズとシーズのマッチングを考えて分析するのではなく、ニーズとシーズをそれぞれ別途に分析することが大切です。近未来社会の登場人物を設定して、その人がどんなことに困っているか、どんなものが欲しいと思うかがニーズ分析の出発点。そしてそれを解決するにはどんな製品やサービスが必要なのか、それにはどんな技術が使えるのかと考えることで、予定調和ではない新規性のあるアイデアが生まれてくるのです」と語る。