プロテスタント校の校長候補を縛る「ミッションコード」

 JR中央線「四谷」駅の千代田区側、紀尾井町方面には聖イグナチオ教会と上智大学がある。番町方面に向かうと、巨大な白い十字架が目に入る。この建物はカトリック女子修道会「幼きイエス会」で、やはり壁面に十字架を模した左側の建物が雙葉の校舎である。

 カトリック校の場合、このように修道院が隣接する例も多く、かつて女子校ではシスター(修道女)が教員も務めていた。ところが、新たに修道士や修道女になる人が近年激減しており、どこも人材確保に苦労している。

 箱根にある函嶺(かんれい)白百合学園では、2020年に修道女以外の校長が初めて誕生した。熊本にある八代白百合学園から転じた柳宗一郎校長で、やはりシスター不足が背景にある。

 2020年に就任した雙葉の日下部和子校長もOGである。上智大学外国語学部卒で、母校の英語科の教員となった。長年、広報・入試担当を務め、教頭を経ずに校長に就任している。創立から7代続けてシスターだった校長も、前校長からはシスターではなくなっている。

 女子学院は創立以来キリスト教精神を基盤にしており、プロテスタント系である。ここはOGではなく、男性の鵜崎創氏が院長(中高校長)を務めている。理科教員であり、副校長からの就任だった。大島孝一氏が1966~80年に院長を務めるなど、男性トップは過去にも例がある。その要因となっているのが「ミッションコード」である。

「ミッションコード」とは、校長はクリスチャンであること、という縛りだ。そのため、プロパータイプの校長確保が必ずしも容易ではない。鵜崎氏も国際基督教大卒後、大手メーカー、テネシー明治学院、恵泉女学園を経て、女子学院に入っている。クリスチャンであれば教派を問わずに校長に受け入れるのかというとそうでもなく、学校による考え方の違いもある。

 信仰もあり校長としての資質もあるとなると、人材はかなり限られてくる。自校もしくは系列校の要員は確保した上で、ミッション校の間では数少ない校長候補者を巡る水面下の動きが常に起きているのだ。