大学への「爆破予告」が相次ぐ
4月7日、政府によって「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言」が、まずは1カ月間発令された。新学期を迎えたばかりの各地の大学は、これを受けてキャンパスが閉鎖され、学生は遠隔授業を余儀なくされた。京都の私大で発生したクラスターが、学生の帰省に伴い各地に拡散したことも事態を深刻化させた。5月25日、緊急事態の終了が宣言されたが、大学のキャンパスは引き続き閉じられたままだった。
スペクティでは、AIによりリアルタイムで事件・事故情報を収集し、最後は人間の目でその情報の確度を判断している。その責任者である根来諭・同社取締役COOは、6月から「爆破予告」が急速に増加していることに気がついていた。
上のグラフのように、この1年間を見ても、2020年5月までは「爆破予告」は月に数件発生する程度だった。大学に対する脅迫は、2019年11月に東京と名古屋の女子大が、12月に東京都心の私大キャンパスが、2020年2月に神奈川にある東京の私大のキャンパスがその対象となったくらいで、むしろ中学・高校への脅迫の方が多いくらいだったのだ。
6月は、東京、大阪、茨城で市役所への予告が相次ぎ、出入国管理局や警察署も対象になっている。一方、大学では、東京と大阪の公立校へのものが発生したくらいだった。大阪の場合は府立と市立の大学統合に絡めた脅迫と捉えられたものの、まだ件数的には少なかったのだ。
例年なら夏休みに入る7月から、様相が一変する。あまり全国的には報道されていないが、福岡・大阪・京都・静岡で中高などへの予告があった一方で、大学への脅迫が急増している。福岡で国立・私立の複数の大学が、長崎・熊本・島根・兵庫・愛知・静岡・岩手・北海道では国公立の大学が対象となり、一気に全国に拡大した。京都では有名私大2校も標的にされている。
8月には爆破予告の合計が45件となり、教育機関がその半分を占めるほどになった。今年は休校期間中の授業の遅れを取り戻すため、中高では夏休みが短縮されている。その点、キャンパスが閉じられたままの大学に対する脅迫は20件も発生している。
高知・島根・兵庫・京都・岐阜の国公立大に加えて、神奈川や東京の国立大も標的になることで、首都圏にも被害が拡大してきた。また、広島・大阪・京都・名古屋の私大も対象にされ、2度目の脅迫で東京に設けたキャンパスを一時閉鎖もする私大も現れている。