10月になっても衰えない発生件数

 2学期が始まり、多くの小中高で通常の対面事業が再開した9月には、特定の市内で複数の学校や施設に対する爆破予告が一挙に拡大している。このように教育機関が狙われる傾向が鮮明になり、沖縄の私大、東京の美大、愛媛・岡山・千葉の国立大でも発生、大阪では私立の5大学が狙われた。

 中でも早稲田大学への脅迫は大きく報じられた。3年前の11月にも同様の爆破予告を受け、その時は3限目まで休講となっている。産経新聞が報じたように、「9月4日に主要建造物を爆破する」というメールが大学に届き、今回は全国の大学キャンパスや付属校も対象になり施設は全て閉鎖されるなど格段に対応レベルが上がっている。

 爆破予告が行われると、対象となった大学はキャンパスの閉鎖や入場制限を行い、警備員の巡回を強める。警察に被害届を出す一方、被った損害に対する賠償請求にも備えている。刑事的には法定刑が3年以下の懲役である威力業務妨害罪に問われる。3年前、競艇場に爆破予告した被告に対して、検察は懲役2年6カ月を求刑、初犯であったのにもかかわらず、執行猶予なしの懲役1年6カ月の判決が地裁で言い渡されている。

 学校関係に詳しい弁護士は、刑事上の責任もさることながら、民事上の損害賠償請求が巨額のものになることが予想され、文字通り身の破滅となることを指摘する。メールや掲示板の書き込みという気軽な行為で、コロナ禍のうっ憤晴らしをしたのかもしれないが、その代償はかなり高くつくことになる。

 こうした爆破予告は、かつてならば電話や手紙で告げられていたが、昨今では掲示板への書き込みや大学へのメールで行われている。なぜ、この夏に急増したのかは、犯人の検挙に至っていないため、その動機も含め詳細は分からない。

 問題は、10月上旬に30件以上の「爆破予告」が発生しており、19の大学が脅迫されるなど、発生件数のペースが落ちていないことにある。大学に対する大量の「爆破予告」も2020年のコロナ禍の歴史に刻まれることになりそうだが、迷惑極まりないこうした行為を止めるには、やはり犯人の検挙が最も効果的となるのだろう。