実倍率3.0倍が分かれ目に

 東京の男子御三家も2021年と2020年で比較してみると、開成の出願者数は1243人と1266人で23人減だが、受験者数は1051人と1188人で137人も減っている。合格者数は398人と397人でむしろ1人増えているため、実倍率は2.6倍と前年より0.4ポイント緩和した。武蔵は出願者数584人で17人減だが、受験者数は574人と6人減にとどまり、実倍率は前年同様3.1倍となった。麻布は881人の出願で合格者数は377人となっている。実受験者数は公表されていないが、2020年並みと想定すると、実倍率は2.3倍程度と見込まれる。

 開成の場合、例年、全国から受験生が訪れる。新型コロナ禍もあって、今年は引率抜きで個別に受けに行くという傾向が見られた。その結果、実際の受験生が減った可能性がうかがえる。ちなみに、神戸の灘にも全国から受験者が訪れる。2021年は16%相当が首都圏1都3県からの出願者だった。

 この他の難関・上位校を見ても、今年の受験生は実倍率に敏感だった様子がうかがえる。神奈川男子御三家では、栄光学園と浅野が共に2%減で、実倍率は前年並みの3.1倍と2.5倍だった。聖光学院は2日1回と4日2回のいずれも16%減と大きく減らしたが、その主因は東京からの受験生の減少とみられる。こうした傾向は、リーマンショックの時と同様と思われる。東大実績が伸長した駒場東邦は出願者数7%増だったが、実倍率は前年比0.2ポイント増の2.2倍にとどまっている。

 1日午前の男子上位校1回目では、海城の出願者数は2%増で実倍率2.9倍、出願者数前年並みの城北も実倍率は3.0倍を保った。一方、巣鴨は出願者数13%減ながら合格者数を絞り実倍率3.8倍と前年並みを維持、出願者数を35%減と大きく減らした世田谷学園は実倍率が前年の4.0倍から2.4倍へと大きく緩和した。前年実倍率3.1倍の成城は出願者数を12%減らして2.7倍に、出願者数1%増の芝は実倍率2.4倍となっている。

 1日午前の女子上位校では、実倍率2倍台半ばから前半程度が主流となった。出願者数21%増の鷗友学園女子は実倍率が0.4ポイント上がったものの2.4倍であり、吉祥女子は実倍率が0.1ポイント減の2.6倍となった。頌栄女子学院も実倍率2.3倍、出願者数14%減の東洋英和は前年の2.7倍から2.2倍へと実倍率が大きく緩和している。

 共学校には“3.0倍”にとらわれない人気校も目立った。慶應義塾中等部の出願者数は男子7%増、女子8%増で実倍率(1次)は2.9倍(前年比0.4ポイント増)、3.4倍(同0.7ポイント増)、青山学院の出願者数は男子20%減で実倍率は3.0倍(同0.3ポイント減)、女子は前年並みで受験者数が増えたため実倍率は6.1倍(同0.7ポイント増)と、いずれも女子受験生の方が高倍率となっている。

 2021年はどのような学校が出願者数を伸ばしたのか。2つめのキーワードである“所在地”について見てみよう。