2科目入試の廃止
以前の連載でも触れたように、首都圏の男子校で一番多く受験生を集めているのは東京都市大学付属(世田谷区)である。2500人を超えるその受験生の半分は、2月1日午後の入試に集まってくる。2022年の東大合格者数が初めて12人と2ケタになった。その勢いもあってか、悲願の2月1日午前入試に参入することになった。
募集人員は一般入試で約240人、帰国生入試とグローバル入試(英語・算数・日本語作文)がいずれも若干名で変わらない。一般入試では、新設する1日午前は4科で約50人(II類約10人、I類約40人)となる。廃止した6日午前の約30人(II類約10人、I類約20人)に加えて、2科となる1日午後からは約20人を充てて、こちらは約100人(II類約40人、I類約60人)となる。これまで2日午前に行ってきた約60人(II類約20人、I類約40人)とグローバル入試は3日午前に移し、4日午前の約30人(II類約10人、I類約20人)は5日午前に移る。
高校からの募集をやめて完全中高一貫化しても、初回入試を2日午前から動かさなかった豊島岡女子学園(豊島区)とは対照的な動きであり、初回の1日午前に第一志望者がどのくらい集まるか、II類の募集人員を維持した2回目となる1日午後の受験者数にどのような影響が出るかが注目点となる。
共学校の東洋大学京北(文京区)は、 2月1日午前の第1回、2日の第3回、4日の第4回入試をいずれも4科目のみに変更する。1日午後の第2回は国数2科のままとする。22年の志願者数で見ると、第1回326人、第2回467人、第3回442人、第4回363人とバランス良く集めているが、1日午後入試は負担の少ない2科にとどめることで併願需要に応えようという思惑もありそうだ。
香蘭女学校(品川区)は、2月1日を4科のみとする。2科の受験者数と合格者数の推移を見ると、19年62人・4人、20年41人・6人、21年36人・2人、22年23人・2人といった具合で、年々受験者数は減少傾向にあった。合否判定は4科合計点で行うが、国算各100点、理社各50点の配点はこれまで通りとなる。また、2日午後は国算2科のままだ。第一志望の受験生のために、繰り上げ合格候補者の決定は、1日と2日の両日受験生を優先している。
神奈川県の学校でも同様の動きが出ている。これまで1日午前の第1回と2日午前の第2回で2科も選択可能だった洗足学園(川崎市高津区)では、すべての入試を4科とし、その総合点で判定することになる。これまで合格者発表数の8割を国算2科合計点の上位から順番に選び、残り2割は、まだ合格が決まっていない4科受験生の4科合計点の上位から選んでいくというユニークな混合判定は、これに伴い廃止となる。
洗足学園では、これまで2科を設けていた理由として、「小6生になってから通学圏に引っ越してきて、準備期間の短い受験生にも広く門戸を開く」ことを挙げていた。主に帰国生が想定されるそうした受験生については、1月の帰国生入試B方式(英国算型)で対応しており、一般入試の2科の出願者数が4科の10分の1以下という現状が、今回の変更の背景として挙げられそうだ。
帰国生ということでは、12月に行う湘南白百合学園(藤沢市)の帰国生入試でも変更点がある。面接は廃止する。海外からはオンラインで対面での入試と同時刻に実施する。また、A方式(英国算で受験し、高得点の2科で判定)もしくはB方式(国算2科)のいずれかを選ぶことができる。
最後に人気の公立一貫校について触れておこう。東京都立の中高一貫校では、武蔵・富士・両国・大泉の4校が22年から高校募集をやめている。2005年に都立で最初に中学校を付設して中高一貫化した白鴎(台東区)も高校からの募集(2クラス80人)をやめ、中高完全一貫化することになった。都立の一貫校の多くは募集人員160人となっている。正式には10月を待たないといけないのだが、高校での募集分が加わることで、白鴎は200人ほどになるかもしれない。同校は、中高の校舎が離れているが、その点は解消しない。
茨城県では、22年に下妻第一と水海道第一が一貫化したことにより、併設型と中等教育学校の県立中高一貫校が13校となった。東京の都立と区立を合わせた11校を上回る首都圏最多である。埼玉県は、県立1校(伊奈学園)、さいたま市立2校(浦和、大宮国際)、川口市立1校の計4校のみだが、ここに来て、県立の新設構想が浮上している。旧制中学の系譜を引くナンバースクールではない、地域2番手の伝統校などがその対象となっているようだ。
【訂正】 本文第15段落について、初出時『東京学園女子の関係者が立ち上げた』の『東京学園女子』を「東京女子学園」に訂正いたします。(2022年5月13日 12:24 ダイヤモンド社教育情報)