併願パターン構築は保護者の腕の見せどころ

 生徒募集は私学経営の要である。より多くの受験生を集め、できるだけ質の高い生徒を確保するため、中高一貫校は入試の仕組みにさまざまな工夫を凝らしている。まずは、四谷大塚の結果偏差値を参照してレベル分けしながら、受験料と入試の仕組みの関係について見ていきたい。
 
 かつてのように、良い受験番号を取るため徹夜で並ぶようなことはなくなったものの、わが子に合った併願パターンの構築と出願の手続きは、「合格」を勝ち取るため受験生の保護者には欠かすことができない役割となる。
 
 難関校こそ出願締め切りを受験日よりだいぶ早く設定しているが、ミライコンパスを利用したネット出願が大勢を占めるようになった結果、受験日前日深夜や当日朝ギリギリでの出願を受け付ける学校も少なくない。その結果、実倍率実績や出願者数動向を見ながら、どの入試に追加出願するかという“情報戦”の様相も呈している。
 
 現状では、通う塾などによってもその数は異なるが、6~8校程度に出願する受験生が多いようだ。2月1日解禁の東京・神奈川に本命校がある場合、埼玉や千葉、地方校の東京会場入試などで力試しをする例が多い。

 東京と神奈川の入試では、1日午前受験校の合格を得るまで、同日午後や2日にも併願校の受験が続く。3日の国公立校が第一志望の場合でも、その前に中堅・中位校が設けている適性検査型入試を受け、2~3の私立校入試を受けて合格を得ておくことも普通に見られる。
 
 受験料は、新渡戸文化のように思い切って無料とした学校もある。とはいえ、それで受験生が劇的に増えるわけでもない。同じ学校を3回以上受ける例はさほど多くないだろう。“受け放題”プランの多くは出願時に受けたい入試を記す必要がある。第一志望の受験生へのメッセージという側面もあるだろう。出願と同時という制約がない学校の場合は、追加出願のハードルは下がる。受験料は、難関校や早慶GMARCHの付属校などの3万円を上限に、2万5000円と2万円程度におおむね2分される。
 
 首都圏では、1回だけ入試を行う学校が20校ある。24年入試では、その中の1校である横浜雙葉が2日午前にも設定するため、19校になる見込みだ。その多くは偏差値60以上の難関・上位校である。受験料は2万5000円から3万円がほとんどで、同じ学校の入試を複数回受けた場合でも、その回数分の受験料が必要となる。
 
 その点、渋谷教育学園渋谷(渋渋)と鴎友学園女子は、同時出願を条件に割り引いている。2万3000円の渋渋は1回当たり1万5000円の追加料金を設定、鴎友は2万5000円のところ2回なら4万円の2割引となっている。こうした学校は、難関・上位校では例外的な存在なのである。