跡見学園中学校高等学校
松井真佐美校長

 跡見学園の開校は1875(明治8)年。明治維新から間もない激動期に、学祖・跡見花蹊(かけい)によって開かれた東京で最も古い女子教育の学校だ。学園の正門を入ってすぐの場所には花蹊の銅像があり、在校生は敬意を込めて、その銅像に一礼する習慣が残る。

 2018年に就任した松井真佐美校長は、自身も中高の卒業生であり、同校で数学教員を務めた後、現職に。女性の生き方が多様化する現代に、跡見学園の伝統を守りつつ、学力と人間力を育む教育プログラムの実践に余念がない。

 近年、同校の受験者数が増加傾向にある。長く跡見学園と共に歩み、生徒との距離も近い松井校長だが、卒業生の多様な進路について、機会があるたびにリアルに発信していることなどが人気につながっているといえそうだ。

「本校では前々からキャリア教育支援に注力しており、社会で活躍する卒業生たちに学校で話をしてもらう機会を設けていますが、その顔ぶれは医師や薬剤師、科捜研の研究員に東大の教員、弁護士、キャビンアテンダントなど本当に多彩です」と話す松井校長。自身が教壇に立っていた時代の教え子も多く、声を掛けると喜んで協力してくれる卒業生ばかりとのことで、伝統のあね・いもとの校風が今も息づいていることを感じさせる。

 多彩なキャリア形成の一助となっているのは「本物」に触れ、豊かな心を育てるという教育方針だ。学祖が実践した情操教育の理念を受け継ぎ、書道・音楽・美術・工芸をそろえた芸術科目の他に、課外授業で茶道、箏曲、華道を専門家から学ぶことができる。オーケストラ、バレエ、歌舞伎に雅楽まで、音楽鑑賞や校外授業の機会も充実。

「昨年度の音楽鑑賞会では素晴らしい音楽や美しい衣装・舞台装置のバレエを鑑賞し、目をきらきらさせて感動する生徒たちを目の当たりにして、私自身も一緒に感動しました。こうした体験の一つ一つが、心の豊かさをつくっていくものと、本校では考えています」(松井校長)

 もちろん、芸術分野だけではなく、平和学習や高大連携授業といった学びの機会も多く、在校生の関心も高い。

創立150周年記念事業で
多目的棟を建設中

「23年度は東京農業大学と連携して『生命を理解するための化学実験』を実施し、中2から高3まで約40人が参加しました。他大学ともさまざまな形で連携しており、今後さらにプログラムを拡充していく予定です」(松井校長)

 なお、25年は跡見学園創立150周年の節目の年となり、記念事業としてキャンパス内に「多目的棟」の建設が進められている。生徒や教職員が面談や自習、休憩などに利用できる空間となる予定で、25年夏ごろの竣工を見込む。「素直で明るい子が多い」という跡見生の憩いの場として、大いに活用される未来が、今から目に浮かぶ。

現在の校舎は直線的な造形が多いが、多目的棟は曲面的なデザインになる予定。壁面はガラス張りで明るい光が差し込み、開放的な空間に(完成イメージ)
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跡見学園中学校高等学校
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