「国の本(もと)になる女性を育成する」との理念の下、1942年に設立された国本女子中学校・高等学校。近年はグローバル化に呼応し、世界の本(もと)となる目標へと広がり、国内だけでなく国境を超えて社会の役に立てる女性の育成を目指している。「人々に幸せになっていただけるよう役立つ人となってほしい、そして自分も幸せな人生を送ってほしいという、設立当初からの国本精神の根幹は変わりません」と豊田ひろ子校長は語る。
カナダ・アルバータ州の教育省と提携し、日本とカナダ双方の高卒資格を取得できる教育課程を高校で提供してきた同校。2025年度からは、日本とカナダの融合カリキュラムをさらに充実させ、中学校に「グローバル・スタディーズコース」を新設予定だ。中学はグローバル・スタディーズのみの1コース、高校は国本女子とカナダ・アルバータ州認定校「KAIS」の両方に在籍し、日本とカナダの双方の高校卒業資格を目指すコースと、国内の幅広い大学への進学を目指す「総合進学コース」の2コースとなる。
入学時の生徒の英語レベルはさまざまだが、初学者からすでに入学時に英検準1級を持っている帰国生まで、日本人教員による習熟度別授業を実施し、きめ細かく語彙や文法といった英語の基礎力を底上げする。その上で、少人数制のクラスでカナダ人教員が教科を英語で教える。例えば、日本語の数学の授業で1次関数を学び、その後、英語でグループワークも取り入れながら「飲食店を経営すると想定し、1次関数を使って売り上げや原価を考え、損益を計算しよう」といった課題に取り組む。知識の習得に重点を置く日本と、知識の応用や成果の発信を重視するカナダの双方のカリキュラムの良さを生かしていく。
英語で教科を学ぶことで
語学力、思考力を養う
「英語で教科を学ぶ」授業は高校のグローバル・スタディーズコースではさらに増え、本格的になる。アルバータ州の現地校に留学することも可能で「英語で教科を学んできた生徒は、現地校に行っても全く物おじしていません」と豊田校長。
カナダ・トロント大学の言語教育学博士号を取得し、バイリンガル教育の専門家でもある豊田校長は、日本とカナダの両国を融合させたカリキュラムについて「バイリンガルな語学力を身に付けるだけでなく、移民の国カナダならではの多角的な視点や、柔軟な思考力、コミュニケーション力を培うことは、グローバル社会でさまざまな人と共に答えのない問いに向き合っていく際に必ずや役立ちます」と語る。日本人としての教養や人間性を高めるため、日本の伝統文化の他、海外からの避難民との交流など、幅広い体験プログラムも実施している。
80年を超える伝統を持つ女子教育に、カナダ流の教育を組み合わせ、グローバル社会をしなやかに生きる女性を育てていく。