「ゼロから1を生み出す力」を育成するために、あまたの中学・高校がどんなに苦労していることだろうか。その点、女子美術大学付属高等学校・中学校では、多くの生徒がその意欲を持って入学する。常にゼロから自分の「作品」を生み出すために、「好き」を生かし、試行錯誤を重ねて、その力を伸ばそうとしているのだ。
並木憲明教諭は言う。「『こちらに入学すれば、美術が好きになりますよね』とおっしゃる保護者の方がいます。しかし、中学受験の段階ですでに美術が『好き』でないと、本校で学ぶのは難しいでしょう」と。
同校は普通課程の中で、最大限、美術の授業時間を確保している。中1~中3までは週2時間×2回で週4時間。美大の付属校としては少ないようにも思えるが、「知性が感性を支える」というポリシーの下、しっかり教科の勉強もさせている。なおかつ、どの教科にも「美術」の要素を取り入れて、生徒たちの興味・関心を引くのが同校流だ。例えば、理科の授業では生徒に化学記号をキャラクター化させたり、顕微鏡で見るものを「絵」で描かせたりする。英語は「自分の作品を英語で説明できるようにする」ことを目標に、独自の教材で「アート・イングリッシュ」を学ぶ。
生徒の個性をそのまま
パワーアップさせる
同校は高校入試で美術大学を志望する生徒を加え、高2から「絵画」「デザイン」「工芸・立体」の三つのコースに分かれる。それらに授業として取り組む時間は週10時間となり、専門性を深めていく。85%以上の生徒が女子美術大学に、約9割が美術系に進路を取る。
「美とは『その人らしさ』です。私たちは、生徒が入学したときの『個性=その人らしさ』をそのまま相似形でパワーアップさせたいと考えています」と、自身も美術大学のデザイン科で学んだ並木教諭は語る。
美術が「好き」という気持ちやそれぞれの持つ「夢」を、実現力や実行力といった「力」に変えて、世の中に送り出すのが同校の目指すところなのだ。
同校の生徒が最も輝くのは、毎年秋に中高大で同時開催される「女子美祭」。個性のパワーや、それぞれの得意分野を生かした協働のパワーが入り交じって、強烈なエネルギーに満ちた場となる。
「外部のコンテストより、女子美の中で1番になることにこだわっている生徒が多いです。それが女子美のブランド力になっているかもしれません」と並木教諭。
同校卒業生で俳優の桃井かおり氏は、高校在学中に上履きを青く塗ったとき、教員から「塗りが甘い」と言われたエピソードを話し、「女子美は文化が違う。留学するような気持ちで入学されたらいかがでしょう」と語ったそうだ。
今、社会では「デザイン思考」「アート思考」が注目されるようになっている。ようやく時代が同校に追い付いてきた。
女子美術大学付属高等学校・中学校
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