聖学院の柱となっている教育理念は「Only One for Others」。何事も自分ごととして取り組み、他者や世界に貢献できる人材の育成を目指している。
伊藤大輔校長は「聖学院での学びを通じて、生徒たちがNumber OneではなくOnly Oneを見つけるサポートをしていきたい」と話す。
「私自身、本校の卒業生ですが、在学当時の校長先生が繰り返し説いておられたのが『Number OneではなくOnly Oneだ』という言葉でした。Number Oneは、他者と自分を比較することで成り立つ評価軸であり、言ってみれば他者依存の状態。これに対し、Only Oneは他者に心を支配されない状態です。『これをするために自分は生まれてきたのだ』と本当の意味で思えたら、それこそがOnly One。その延長線上には『この人たちのために生きよう』というfor Othersの心があり、平和を生み出す思考へとつながっていきます」(伊藤校長)
Only Oneは簡単に見つかるものではない。しかし「『これが私だ』と思えるものが見つかれば、人生において困難に直面したとき、それは必ず心の支えとなるでしょう」(伊藤校長)。
Only Oneを見つけるきっかけはどこにあるか分からない。そのため聖学院では、学校の内外で取り組む多彩な教育プログラムという形で、さまざまな“入り口”を用意。また、生徒の思考力を育むことを目指し、全教科に「深い学び」を実践するための「ICE(アイス)モデル」を導入している。ICEとはIdeas(知識)、Connections(知識の活用)、Extensions(課題解決)の頭文字で、主体的・対話的で深い学びを実現するための学習法だ。これらを通じて、生徒一人一人がまだ見ぬOnly Oneを探すための土壌をつくり上げている。
過去には、それまで学習意欲の薄かった生徒が、探究型宿泊行事で訪れた農村体験を機に、過疎化した地域と買い物弱者の問題に関心を寄せるようになり、問題解決に向けてミドルティーンながら起業した事例もある。ふとした出合いが入り口になり、人の考え方、生き方をがらりと変えるということがよく分かる。
グローバルイノベーション
クラス第1期生が卒業
そんな聖学院の学びは年々成長を遂げている。2021年度には「グローバルイノベーションクラス」を高校に新設。STEAM教育の他SDGsを英語で学ぶなど、独自の先進的プログラムを展開してきた。その第1期となる学年が24年春に卒業した。新設クラスでの豊かな学びは進学実績にもつながっており、国際基督教大学、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス、立命館アジア太平洋大学などへの合格を手にしている。
前述のクラス以外でもSDGsを学ぶ機会は多く、隣接する女子聖学院の生徒と合同で「聖学院SDGsプロジェクト」を実施するなど交流も活発で、お互いに刺激を与え合っている。