「当校の建学の精神は、言い換えれば『誰かの役に立とうとする意志と能力を持った人材の育成』です」と語る岩本正校長は、実行力を備えた真のグローバルリーダーの育成に取り組んでいる。
リーダーに求められる資質は何も解決策を考えることだけではない。説得力をもって自分の考えを伝え、周囲を巻き込んでゆく力も必要だ。成城の中高6年間ではそうした力を培う、特色ある授業を展開する。中1で行う「統計」では、数式を使ったデータ処理を通じ、自論を裏付けるエビデンスの作り方と論理思考を学ぶ。中3の「探究」では、議論・企画・プレゼンの基礎を身に付け、2学期には民間企業の協力の下、事業課題における解決策の提案に取り組む。高校では自ら社会課題を探究し、チューターのサポートを受けながら論文を完成させる。高1・高2では、ネイティブ教員の下、オールイングリッシュで英作文を鍛える「英語表現」を実施。グローバル社会での活躍を見据えた教育が行われる。
教員・OBの情熱が導く
たくましい人間力の形成
成城では、グローバル教育とキャリア教育の部門を再編し、2022年より「グローバル・キャリア教育係」を新設。7人の教員が、生徒の人間力を高める学びの機会創出に意欲を燃やす。23年8月に実施した4泊6日の「カンボジアキャラバン」はその一つだ。
以前から、「ニュージーランド・ターム留学」やオーストラリア・台湾での「グローバルリーダー研修」などを実施してきたが、今回のカンボジアでの研修はシリアスな経験となった。生徒たちが訪れたのは観光地に近い、「広大なゴミ捨て場」。廃棄物から資源を収集して生計を立てる人々を調査し、社会格差の実態に迫った。
また、以前からの研修先であった台湾では、「新竹高級中学」と姉妹校を締結。同校生徒を成城に招くなど交友を深め、24年3月の「台湾グローバルリーダー研修」では、台湾でのホームステイを実現した。「単なる語学研修ではなく、異文化や社会課題に触れて心の成長を促したい。そのために教員たちは現地を訪問し、精力的にコネクションをつくっています」(岩本校長)。
一方、キャリア教育ではOBによるキャリア講演会の強化を図る。
「その原動力はOB有志が立ち上げた『オトナビ』というプロジェクトです。『中高時代にもっと大人の話を聞きたかった』というOBたち自身の思いから、後輩のために積極的に講演者のコーディネートに協力してくれています」と岩本校長はほほ笑む。
スペシャリストや文化人、起業家など人材には事欠かないのは伝統校の成城だからこそなせる業だ。後輩思いのOBたちも「社会に有為な人材を育成する」という成城のスピリットを体現してくれている。