“玉聖”では2年ごとに聖書に挟む「布しおり」を作り生徒に配布する。そこには「学校目標」として聖書から引用した言葉が印刷されている。2024年度のしおりの言葉は、「Love one another as I have loved you.(私があなた方を愛したように、あなた方も愛し合いなさい)」。
「世界で争いが絶えないこんな時代だからこそ、聖書の言葉に基づいた心の教育が大事なのだと思います。理想論としてではなく、相手に評価されなくても無条件に愛し合うこと、そのような生き方を選択できることを、若いうちに知ってほしいのです」
そう話すのは、安藤理恵子学院長だ。
玉聖の特色は、さまざまな行事を通して友情と信頼を学び育てること、自分と異なる背景を持つ人とも対話をして、共に生きていく力を身に付けることにある。
23年度から、コロナ禍で中断していた奉仕体験が再開した。10月には高1がチームをつくり、高齢者施設や障がい者施設でボランティアを実施。クリスマスの時期には、中3~高3の有志が群馬県のキリスト教高齢者施設に1泊し、賛美歌を歌いながら施設内を巡るキャロリングを行った。また、10年来の姉妹校である崇義女子高校との交流をメインにした高2の韓国修学旅行(3泊4日)を再開、4年ぶりに親交を温めた。夏休みには、希望者を対象とする16日間の米国研修も再開され、高1・高2の生徒40人が参加した。
高校では「玉聖アクティブプログラム(TAP)」と呼ばれる、授業以外の実践的体験学習がある。地球共生、人間社会、サイエンス、芸術・メディア、言語コミュニケーションの五つの領域から、選択授業や体験プログラムを選択して参加する。ここでも大切なのは人とのつながりだ。
終礼を通して他者を
信頼していくことを学ぶ
玉聖の一日は、毎朝の礼拝から始まりクラスごとの終礼で終わる。終礼では賛美歌を歌い、毎日生徒が一人ずつ皆の前で話をする。「聖書の好きな一節を選んで読み、その後で短いスピーチをします。内容は何でもよいのですが、次第に個人的な悩みなど本音を語るようになります。クラスメイトはその話を静かに集中して聴きます。大切なのは1人の話を皆で共有する経験をすること。女子だけの世界だからこそ、生徒たちは終礼を通して他者への信頼と自己開示を学びます。それは社会に出てからも、必ず役立つはずです」(安藤学院長)。
人格教育を重視する女子のためのキリスト教学校として、玉聖は根強い人気がある。24年の中学入試では志願者が増えて4クラス編成となった。進路は推薦・総合型が85%以上を占める。高大連携やキリスト教大学への推薦での進学が多いのも特徴だ。聖書に基づいた安心できる関係性の中で、友情と信頼を育てていく学校である。