楽しいからこそ知りたくなる。それが学びの出発点」。石飛一吉(いしとびかずよし)校長は、常に「学び」と「楽しい」をセットで語る。その象徴が、2022年度から始まった「探究ゼミ」だ。高1・2の生徒が八つのゼミに所属、毎週水曜、地元・多摩市の行政や住民の後押しを受けながら地域課題に没頭する。
商店街活性化がテーマのゼミは、高齢化が進む団地商店街の4店の菓子を集めた「セレクトショップ」を秋祭りで臨時営業。開店30分で一度売り切れる人気ぶりで、1日5万円の売り上げを記録した。別のゼミでは高齢者向けに、スマートフォンの使い方講座とおしゃべりサロンを開催。終了後、追加開催を頼まれた。防災ボランティアやプロサッカーチームのファンミーティングを実現したゼミもある。これらの成果を地元の大通りで発表し、聞いた市民に投票で採点してもらう。
「生徒自身で考え、住民や行政と話をつけるまでになりました。私や教員はほとんど介入しません。土曜も活動したい、少し資金を貸してほしいなどの依頼や相談があるくらいです」と石飛校長はほほ笑む。高2はさらに、修学旅行先の沖縄・宮古島の県立八重山商工高校の生徒に交流を打診し、今年1月に討論会を実現させた。「探究ゼミで地元の課題に深く関わったからこそ、他地域にも目が向いたのでしょう。同世代と交わることで、調べ学習ではたどり着けない深さの学びがあったようです」(石飛校長)。
高校の探究ゼミへの助走となるのが、中学の探究体験「A知探Q(英知探究)」だ。夏休みの4日間、全教員が「生徒と学び楽しみを共有する」を合言葉に、麻雀(マージャン)、ボクササイズ、高山植物観察、ボルダリングなど独自のテーマで体験型の講座を開く。
「親は先回りしないで」
楽しさから入る学びの形
探究学習と両輪を成すのが、基礎学力対策だ。教科を問わず、小テストなどの反復学習を確立しているほか、生徒のノートとプリントを担当教員がチェック、授業の理解度を把握する。放課後は大学生が夜8時すぎまで常駐する「セルフ・スタディー・ルーム」で予習・復習や進路相談を支援する。「勉強に付いていけない生徒が出ないような授業や支援を手厚くしています。一方、成績上位の生徒のための『アドバンス講座』を学期末に開き、伸ばす環境もつくりました。宿題の出し方も同様に、個別化されつつあります」と石飛校長は言う。
24年度の志願者数は前年度比3割増。1クラス増えた。「探究学習の様子などから、楽しそうな学校という印象を持ってもらっている」と石飛校長。保護者のための校長主催の勉強会である「聖塾(ひじりらぼ)」では「子どものでこぼこ道を、親が先回りして滑らかにしないでほしい」と話したという。「探究も失敗を経験してより豊かになる。ランキングや偏差値を超える生徒を育てていきたい」(石飛校長)。
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