
吉野 明校長
「枠を超える」。2024年度に就任した吉野明校長は、芝国際の前身・東京女子学園の創立以来120年余の伝統をつなぐキーワードをそう語る。
「東京女子学園は、創立当初から男女の間に横たわる枠を突破し、日本社会に貢献する人を育ててきました。芝国際は国と国の枠を超え、国際社会と未来に貢献する人を育てようとしています。いずれにしても、創立以来の理念『人の中なる人となれ』は脈々と受け継がれています」

目指すのは、経済協力開発機構(OECD)の「ラーニング・コンパス2030」で掲げられた「ウェルビーイング(心身の幸福)」だ。「社会の変化は激しく、ICTやAIなど技術革新も加速しています。既存の枠組みにとらわれず、自分の心と向き合い、他者とも良好な関係を築きながら、自分らしく幸せで充実した人生を送れるような力を育みたい」(吉野校長)。
そのため、生徒が興味に基づき自ら考え、行動できる場を重視する。中3の修学旅行では、「平和」というテーマのみ学校から生徒に示された。このテーマに沿うプランを生徒が立案し、何度もプレゼンが実施された。保護者の前でのプレゼンも経て行き先を決めて、旅行会社との話し合いを進めている。

川上武彦入試広報部長
同校が重視する「STEAM教育」からは、成層圏に観測バルーンを打ち上げる自主プロジェクトも生まれた。企業の協賛を得ながら資金調達から実施まで取り組んだ。入試広報部長の川上武彦教諭は「百万円単位の資金を、生徒自身が調達してきました」という。
正規の授業や行事から、部活動や課外プロジェクトへ広がった例は枚挙にいとまがない。「授業や部活動といった従来の枠にとらわれず、生徒の興味や意欲から活動が自然に生まれる。こうした動きを学校内だけにとどめず、『やってみなさい』と生徒の背中を押す教員がいるのが、この学校の良さでもあります」と吉野校長は目を細める。