自然と本に触れ、深く読んで
しまう仕掛けをつくる
国語科副主任の原口舞由子教諭は、「読む・書く・話す・聞く」の国語の基本技能に加えて、「表現すること」の楽しさや奥深さを授業で追究している。

その一つの例が、「本の帯コンテスト」。「生徒はお気に入りの本を1冊選び、キャッチコピーやあらすじ、印象的なフレーズなどを手描きで帯に仕立てます。イラストや配色、字体にもこだわり、美術や書道の知識を生かしながら、“伝わるデザイン”を模索する。この取り組みでは、新宿区の鶴巻図書館が主催するコンテストに参加し、本校の生徒たちが、毎年多数入賞を果たしています。国語、美術、書道などの視点を融合させた活動であると同時に、読書の楽しさや表現の面白さに出合う貴重な機会になっています」。

さらに中学では、古典作品の名場面を演じ、発表する「名場面発表会」も実施している。1年次には『竹取物語』、2年次には『枕草子』『平家物語』、3年次には『論語』『おくのほそ道』と、毎年異なる古典に触れながら、登場人物の心情や物語の魅力を自分の言葉で紹介する。例えば『平家物語』では、安徳天皇の入水や熊谷直実(なおざね)と平敦盛の一騎打ちなどを場面ごとに担当し、古文と現代文の音読、あらすじ、名言の紹介、感想などを班ごとに発表する。仲間と協力して作品を読み取る過程を通して、読解力や表現力を育てていくのだ。

国語科副主任の原口舞由子教諭(右)
さらに読書活動にも力を入れている。『走れメロス』の授業では、「名言集」を制作する課題が与えられる。自分の好きな場面を選び、その理由や登場人物の心情を考察し、自分の言葉で表現する。「“ありがとう友よ”という印象的なせりふに感情移入し、言葉の力を実感する生徒の姿も印象的でした。授業では、自然と本に触れ、深く読んでしまう仕掛けをつくることを大切にしています」。
音楽の授業では「音」で、国語の授業では「言葉」で自分を表現する経験を積み重ねる。それらを通して生徒たちは自己肯定感を育て、「私はこれでいい」と思うようになる。

「本校の生徒の進路は、学部の多様性や専攻内容の幅広さが目立ちます。偏差値で学校を選ぶのではなく、自分のやりたいことができる大学を自ら選ぶ生徒が多い。それこそが本校の教育の成果であり、最も誇らしい点です」と吉田校長は話す。生徒一人一人が自らの興味や個性を伸ばし、社会に出たときに“自分の力で道を切り拓ける人間”になる。目白研心の6年間はその土台を築く場となっている。