自学自習を支援
主体性が芽生える生徒たち

 進学実績の向上には、中学の教育体制の見直しも大きく関与している。中学の段階から教科学習にとどまらず、学ぶ意欲や好奇心を引き出す「青稜ゼミ」(教員たちが自らの得意分野や興味関心を基にゼミを開催)やビブリオバトルなどを通じて、非認知能力の育成に力を入れるようになった。プレゼンテーションやディスカッション、読解や表現の訓練が、勉強というよりは「楽しい活動」として取り組まれている。

読書活動の一環で実施するビブリオバトル。全国大会で第3位になったことも

「教員の配置についても、中学と高校、それぞれに適性を見極めて人材を振り分けました。基本的には中高で運営体制を分け、役割を明確にしています。中学の教員は“ここまで育てたから、後は頼む”とバトンを渡し、それが高校教員への良いプレッシャーになっている。中高一貫教育の中で、こうした連携と緊張感が全体の教育力を高めています」

 また同校では、早くから学習の習慣を身に付けさせるため、自学自習を支援する場として、チューターが常駐する「Sラボ」を開設。「その日に学んだことをその日のうちに振り返る」ことを目指す自習システムは、今ではすっかり学校文化の一部として定着した。生徒自らが学習計画を立て、自己管理力を身に付けていく仕組みは、勉強と生活のバランスを取るためにも有効で、放課後のブースは常に満席状態になっている。

放課後の空き時間を活用して、自学自習の学習習慣を身に付ける「Sラボ」

 教科学習の特色は、先を急がず基礎学力をじっくりと定着させることにある。中学では週6日7時間制によるカリキュラムを編成。基礎5教科の授業時間数を文部科学省の標準時間よりもかなり厚めにして基礎を固め、高校での大学受験対策につなげている。

 青稜の特徴的な活動として、地域社会や企業とのさまざまなコラボレーションもある。24年度は、SDGs部×ローソン×品川区の連携で、支援が必要な子育て家庭に食品や日用品を届ける「しあわせ食卓事業」を展開。東急電鉄の「SDGsトレイン」への参加は3年目となり、東急世田谷線を貸し切りにする授業も予定している。教員が特に指示を出さなくても、自ら情報を集めて、外部のコンクールやコンテストにエントリーする生徒も増えてきた。生徒たちはICTスキルが高く、動画やプレゼン資料を短時間で高いレベルで仕上げてくる。受賞して初めて学校が知るケースも多い。こうした主体性の芽生えの背景には、「挑戦すること」を否定しない学校側への絶対の信頼感があるのだろう。