8年間、毎朝校門で登校する生徒を迎えた栗原氏。その想いを受け継ぐ「うたこ桜」の樹とプレート

教員が元気になる仕組みをつくる

栗原 4月中にさっそくグローバル教育の導入を提案したところ、次々に質問が寄せられました。何かいきさつがあると推察しました。能力の高い先生がそろっています。組織をうまくつくることができれば動くだろう。構造的には、校内の組織を改編する必要がある。

 感情的な対立はしたくないので、資料をつくり、“論”でぶつけあいました。時間はかかりましたが、退任のときに先生方がつくってくれた「うたこ桜」のプレートを見て、すべてが吹き飛んでしまいました。

――都立と違って、私立では異動がありません。どのようにして学校を変えていかれたのでしょうか。

栗原 当時70人近くいた先生全員と、1人1時間の面談を始めました。校長室の前にスケジュール表を貼っておいて、自分で希望する時間を書き入れてもらいました。

 面談をして分かったのは、どの先生にも思いがあるけれど、バラバラで、束ねる人がいない横一線の状態だったことです。どのようにして変えたらいいのか、方法論を持ち合わせていませんでした。

 成城は中高の6年間、生徒と教員が持ち上がり式です。学年団という6個の学校があるようなもので、この組織はすぐには変えられないと、その時は率直に思いました。

――以前、卒業生から「うちの学校は6年に一度、すごい実績を出します」と聞いたことがあります(笑)

栗原 まずは、2~3年をメドに「将来構想プロジェクト」のメンバーを公募しました。どのように変えていくのか、そのための方針をつくり、先生方と共有していくためにです。

 明治18(1885)年創立の知・仁・勇を掲げる伝統教育の内容を明確にするとともに、そのままでは抽象的な校訓、「自学自習」「質実剛健」「敬愛親和」「自治自律」や文武両道主義などをどのように具現化していくのか。

 また、中高完全一貫校へ改編する準備として学則変更の手続きも進めていたため、2016年度に「将来構想プロジェクト」を解消し、「カリキュラム委員会」に変更しました。その目標は、教育改革の流れの中で、学習指導要領改訂、大学入試改革を踏まえて中高完全一貫カリキュラムの完成です。

 この委員会のリーダーシップにより、「自学自習」などをテーマに複数回に及ぶグループディスカッションがその都度メンバーを入れ替えて行われ、教員集団がスピード感を持って動き出しました。成城パワーを感じました。

――募集のほうはどうされましたか。 

栗原 教育方針を「成城の教育」という1枚のシートにまとめ、学校説明会で受験生と保護者に配布しました。

 2013年は2回の入試で1152人でしたが、入試を3回に増やして、2014年入試では2187人と志願者数をほぼ倍増させることができました。この水準を維持していければいいなと。2600人を超えた年もありますが、現在まで2100人以上で推移しています。

――学校の目指す方向と内容が伝わっていった成果ですね。とはいえ、そうすんなりとは進まなかったのではないですか。 

栗原 反発はありました。戦後ずっと、校長は内部昇格でしたし、私は初めての女性校長でしたから。先生方には、「私は私立校のことは知りませんでしたので教えてください」と言いました。でも、迎合しても仕方ないので、学校を存続させるためにも私を利用しなさいよというスタンスで臨みました。