教員組織にもリーダーを育てる

――教員の組織はどのようにして変えていったのですか。

栗原 当時の成城には人材の育成システムがありませんでした。その点、都の主幹制度や主任配置といった人事制度はよくできています。そこで、先生方の中からリーダーを育成するため、入試広報室、教務主任、進学指導係など重要な部署のリーダーには、権限を与え任せていく、事実上の主幹や主任となる人材を、成城流に育成する必要を痛感しました。

 従来とは異なることを私がやろうとしていることに、疑心暗鬼の先生方からは大反対を受けました。しかし、将来構想プロジェクトやカリキュラム委員会などの学校経営の根幹に触れる内容の取り組みを一緒に行いながら、何度も校内組織に対する考えを説明し、理解してもらいました。数年かかりましたが、この取り組みでリーダーが育ち、リーダーシップを発揮した者たちが、現在、校長や教頭や主任を務めています。実際にこの人事を発表してからの反対はなく、今後しばらくの間、継続されていくと思います。

――2017年から高校の募集をやめて、募集定員を240人から280人に変更していますね。

栗原 例えば臨海学校という伝統的な行事があります。先輩である高2生が補助員として新入生である中1生を指導するというもので、これを学校はセールスポイントにしていました。

 ところが、高校から入ってきた生徒は中学での臨海学校の経験がない上、都立高校の滑り止めで入学し、ポジティブな気持ちではないため、こうした場で活躍しにくいのです。

 このような状況を改善するために、中高完全一貫校にしたいと思いました。それには高校からの募集をやめて、その分だけ中学定員を増やすということで280人の募集となりました。中高6年間の教育課程は既にカリキュラム委員会で作業を始めていました。

――どのようにカリキュラムを変えていきましたか。

栗原 カリキュラム委員会が精力的に動きました。「将来構想プロジェクト」以来の議論のまとめや、グループディスカッションのまとめ、教育課程の案などを、職員会議で提案しては議論を重ね、それまでバラバラだった教科指導も、先取り学習を含めてシラバスの形にまとまっていきました。

 特にICT(情報通信技術)教育では、「成城オリジナル」をつくりたいと考える教員が出てきました。ビジネス界からの要望は数理統計にありますが、その教育課程上の位置付けは弱い。そこで、将来を見据えて中1の「総合的な学習の時間」に「数学統計」を新設し、中学段階から「統計」の基礎を前倒しで学び、高1の「情報」でプログラミングにつなぐというものです。

 この実現の裏には2名の数学科教員による「情報」の教員免許取得があります。彼らは関連する学会に所属し、プログラミングソフトの研究をするなど意欲的です。

「数学統計」では、論文を書くときに役に立つタイピング練習も行います。タッチタイピングで“級”を認定する仕組みですが、男の子は「よーい、どん!」で競うのが好きなので、とても盛り上がりますよ。

※(2)に続く