高校3年生の9月から約半年間をかけて卒業制作に着手(写真は油彩画コースの様子)。作品は東京都美術館での卒業制作展に展示され、各コースの最優秀作品には「100周年記念大村文子基金」から褒賞が行われる 写真提供:女子美術大学付属高等学校・中学校

就任早々、教員の熱弁に驚く

女子美術大は、大学院と短大を含めても全学で3100人程度の小規模大学である。そこに安定的に学生を進学させることが、現在、全校生徒1059人の付属中高に求められる第一のミッションである。

――いざ、付属校の現場に赴任していかがでしたか。

石川 「絵を描くということは自分を見つめることです」と国語の先生に言われました。美術の先生ではなく(笑)。

 広報担当や入試委員長、 部主任といった先生方に、「この学校のいいところとか、うちの生徒どうなのよ」と尋ねると、皆さん熱弁をふるい、この学校や生徒のことを褒めるのです。

――ちょっと特殊な環境だと思われましたか。

石川 公立校と違って、新卒で入ると42~43年間、同じ学校にいるわけです。私も校長として4年間必死にやっていますが、“女子美愛”ではうちの先生方には全然かないません。まだ怒られています(笑)。

 先生方は、自分の目の前にいる生徒を必死でかわいがります。「いい学校」にしたい、「いい学校」であると信じているわけです。ところが、学校運営にはみなさんあまり関心がない。職員室が「秘密の花園」だなあと気がついたのです。

――あんまり競争しようと思っていないのでしょうね。

石川 平和です。昔は偏差値も50以上あったのが、私の赴任時には30台になっている。中学の入試が実質1倍台なのにも驚きました。あとで教頭から「何年か前には募集が大変でした」と教えられましたが、そんな危機感は感じられませでした。まずは実倍率を2倍にしたいなとすぐに思いました。

 募集定員が割れていなかったので、大学にもこうした実態はよく伝わっていないようで、校長として世間の動きや文部科学省の方針を先生方にどしどし伝えないといけないな、とも思いました。

――世の中は変わっていっているわけですからね。

石川 こんなに良い教育をしていて、生徒も楽しそう、先生方も優秀で一生懸命やっているのに、なぜなのか。これは学校からの情報発信が不足しているからだと思い、学校説明会などで伝えることに躍起になりました。

 赴任した翌々月、1回目の学校説明会は6月に実施しました。 そうしたら、会場の体育館に職員室から教員がみんなでやって来て、「今度来た校長は何を言うのか」と見ているの(笑)。不安だったんだと思います。

――「何も問題がない」というわけではなかったのですね(笑)。

>>(2)に続く