(1)(2)エントランスは広いホールとなっており、広く取られた階段と合わせてさまざまな展示会や集会、演奏会などの会場としても活用できる (3)正面玄関は、エントランスとともに新校舎の顔となっている 
拡大画像表示

広々とした校舎内にもコスト削減の工夫の跡が

――これだけ広々としたエントランスは珍しいですね。中国は北京大学附属中学校、韓国は梨花女子大附属中学校との交流も展示してありますね。

上野 エントランスの階段は、中等部祭の時には客席になったり、何かの集まりの際には並んで記念撮影をするなど、クラス・クラブや卒業生の集まりでも利用されています。

 このロビーは展示スペースにもなっていて、現在は青山学院グローバルウィークの展示を行っています。国連のSDGs関連のものや、交流している海外の学校とのオンラインでのやりとりの記録などです。この1年半、春の韓国やフィリピンへの訪問、夏に2週間、現地に滞在するオーストラリア・ホームステイも行くことができませんでしたから。

――先ほどのMSでも、社会科のところでは、歴史地理研究会などの展示もありました。さまざまな情報を生徒に向けて発信していこうとされている。ところで、東京五輪の開催が決まった時期に新校舎を考えた学校は、どこも建築費の高騰に苦しんでおられましたが。

上野 うちも同様です。例えば、2階の廊下の床や側板は木にしたかったのですが、建築費の高騰でコスト面での調整を余儀なくされ、礼拝堂の前だけになりました。また、外壁もすべてレンガ張りにしたかったのですが、道路に面したところだけで、グラウンドに面しているところまでは手がつきませんでした。とはいえ工夫を施し、結果として、グラウンド側から見ると高等部・初等部の壁と統一感のあるデザインになったので、調和が取れてよかったのですが(笑)。

――グラウンドは、高等部と共用ですね。

上野 そうです。都会の真ん中の学校で、土地がありませんからね。11月にはここで延期した運動会を予定しています。もともと10月の予定でしたが、8月の感染拡大によって9月の初め2週間をオンライン授業にし、3週目より対面に戻したのですが、コロナ禍で運動している子としていない子の体力差が広がり、急に激しい運動をすると、けがなどのリスクが高いので延期しました。例年は一般公開しているのですが、今回は非公開での開催です。

――体育館には今回、手を入れていませんね。

上野 築26年になりますが、温水プールも設置されています。この夏休み、プールを改修し、かなりきれいになりました。

 コロナ禍の中、ニュースでは毎日のように渋谷のスクランブル交差点が映っているように、渋谷は日本一多くの人びとを引き付け、互いに刺激し合うことによって新しいものを生み出してきた活気ある街です。そして、いま再開発の真っただ中にあり、従来の商業地から最先端のIT企業をはじめとしたビジネス街へと生まれ変わりつつあります。

 渋谷駅から徒歩10分の私たち青山学院のキャンパスも、幼稚園児から大学・大学院生、留学生、さらには第一線の研究者たちが一堂に会し、お互いに刺激し合って新しいものを生み出しています。そして、そこに立つ中等部の教科センター型の校舎でも、生徒たちには学年・クラスを超えて交流し、刺激し合い、新しいものを生み出していってほしいと考えています。そして、このような環境で学び、より“クリエイティブな人材”へと成長していってほしいと願っています。

道路に面した外壁部分にのみレンガを張り(左)、廊下の床や壁の板張りも一部分に限定する(右)など、建築費高騰によるコスト削減を意識しつつ、デザイン性を維持するための工夫の跡も見られる
拡大画像表示