奨学金付きの米大直接進学も実現
――高校の生徒さんの中から、海外直接進学も出てきたようですね。
日野田 今年3月の卒業生を高2の段階から引き受けました。来た当初は、校内ではアウトカムが分からず、コミュニティーカレッジ(2年制)でも行ったら海外だ、みたいな雰囲気でした。週に2~3回、僕が1人1人メンタリングをして、この4人だったら行けるかなと判断した生徒は、潜在的な能力を持っていたと思います。4人で8校に合格しています。奨学金を得ることで、日本の私大に下宿して通うのと同じぐらいの負担で進学することができます。
――そこが分かるのは、やはり日野田先生のキャリアがあるからでしょうね。そうでなかったら、そういう子たちはMARCHでも行こうかな、だったのでは。
日野田 勘違いをさせるのは得意なので(笑)。朝7時に来ると、この男の子たち4人が待っていました。家庭教師みたいになって、しばき倒しました(笑)。
――しばき倒したわけですね(笑)。
日野田 何回も泣かせました(笑)。1人はレベルとしては東京大と同じくらいで州立大では全米トップ10に入っているマサチューセッツ州立大に2万ドルの奨学金付きで、もう1人は全米トップクラスに入るリベラルカレッジに4万ドルの奨学金付きで受かりました。それから、プリンストン大の最終選考に残っている子が1人、タフツ大は落ちたもののハーバード大の面接を受けた子もいます。今年はアイビーリーグを逃しましたが、1人が再度挑戦することになったので、3人がアメリカに渡ります。
――本人たちに意欲を持たせるには、どういう指導をするのですか。
日野田 海外進学のために大学に提出するエッセーは、日本の小論文とは違って、自分の目指すところや自分の強み、自分の夢とかトラウマとか、かなり細かいところまで全部を引き出していかないといけません。そういうところをハーバードの試験官とかは見抜いてきますから。
エッセイを書く過程で、自分との葛藤を乗り越えるときがすごくしんどい。「僕は素晴らしい社会で生きていきたい」と書いたら、「素晴らしい、の定義は何?」「どういう根拠で?」「どういう実績がある」と突っ込まれます。
生徒はつらくて逃げるかもしれませんが、そこから逃げるのであればそこまでの人生です。向き合いたいと思うから、ここにいる。僕もやっていましたが、まさに武道と一緒です。それを乗り越えた子たちは、自分に自信がつき、相手に対してもやさしくなれます。
――自分自身を乗り越えるわけですね。
日野田 僕と一緒にだけではなく、その4人で話し合って、自分たちでメンタリングしなさいと。乗り越えることで、勝手に成績は上がっていきます。そのためには英語の勉強をしないと伝えられませんし、理屈も必要だから数学も勉強しないとだめだよね、と。
そうしたことが明確になってくると、モチベーションはおのずと上がります。あとは、いまハーバードやプリンストンに行っている先輩に自分で連絡して、現役の学生とも一緒にやりなさい。どういう世界観で勉強しているのか分かるから、そこに近づきたいと思うだろう、と。