武富士の管財人に就任した小畑英一弁護士(中央)。ノンバンクの破綻案件を多く手がけてきた

 9月に会社更生手続きの申し立てをした武富士の再建スキームに注目が集まっている。今回の手続きは、武富士に有利過ぎるのではという指摘が高まっているからだ。

 武富士は、10月31日から債権届け出の受付を開始。これは、利息制限法以上の金利で借りたことがあり、過払い利息返還請求権を持っている人に対し、期間内に債権者として届け出るよう呼びかけるもの。対象者は最大で200万人を超え、過払い利息は2兆円を超える見通しだ。

 会社更生手続きで届け出を受け付ける際、権利を有する全員に手紙などで通知するのが通常。ところが今回、武富士は広告やCMで告知するだけで全員には通知しない方針だ。

 その理由について小畑英一管財人は、「過去に借金していたことが家族にばれてしまった場合など、膨大なクレームが発生する可能性があるから」と述べている。

 これに一部の弁護士たちがかみついた。というのも全員に通知しなければ、知らないうちに権利を失ってしまう人が出てくるからだ。そもそも全員に通知しない場合には、届け出なくても失権しないとの考え方があるくらいだ。

 しかし、東京地方裁判所は武富士の方針を認めそうだ。そうすれば「過払い利息返還請求権を持つ人の犠牲の下に、新スポンサーのなり手が出やすくなるからだ」と一部の弁護士は指摘する。届け出ない人を失権させられれば、債権をカットできて武富士の再生は非常に有利となる。それがゆえに「過払いロンダリング」と批判されているのだ。

 今後、手続きがどのように進むのか不透明だが、期限である来年2月28日を過ぎてしまうと、失権してしまう可能性が高いから注意が必要だ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 野口達也)

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