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日本に巣食う「学歴病」の正体

学歴という幻想に騙されない人、振り回される人の「人生格差」

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第33回・最終回】 2016年8月30日
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人はなぜ「学歴病」にかかってしまうのか。そして、それを克服するためにはどうしたらいいのか――。連載最終回は、筆者の考えを改めてまとめることで結びとしたい

 連載『日本に巣食う学歴病の正体』は今回が最終回となる。前半で多くの人が学歴について誤解をしているのではないかと思えることについて、そして後半ではその流れを受けて、ある男性と筆者にまつわるエピソードを紹介したい。

 「学歴」と言えば、実態に基づかない捉え方、嫉妬、優越感など、独特の感情を呼び起こさせることが少なくない話題である。こと企業社会においては、そうした独特の感情により、学歴を軸にしてしか自分と周囲との関係性を捉えられない人も現れる。本連載ではこうした状態を「学歴病」と呼び、警鐘を鳴らしてきた。

 人はなぜ「学歴病」にかかってしまうのか。そして、それを克服するためにはどうしたらいいのか――。筆者の考えを改めてまとめることで、本連載の結びとしたい。


実は厳格な「学閥」など存在しない
企業社会はそんなに甘い場所ではない

 まず、学歴についての「誤解」を解きたい。今なお多くの会社員が抱いているであろう、「企業社会において学歴の高低と仕事の実績や成果、さらに昇格には関係がある」という誤解だ。

 実は、大企業から中小企業にいたるまで、経済小説やドラマで取り上げられるような、わかりやすい形での「学閥」なるものは、ほとんど存在しないと筆者は思っている。おそらく、「学閥」が企業社会に厳格に存在していたら、戦後の日本の発展はあり得なかっただろう。戦後の経済界のリーダーたちは、世代を超えて、きっとこんなことを考えていたのだと思う。

 「社員間の競争を熾烈で激しいものにするためには、その競争に参加する人を1人でも増やすことが前提になる。そのためには、東大や京大卒の社員から、入学難易度が低い大学の卒業者までを同じ競争に参加させ、そこで実績を残した人のみを認め、評価し、一定のポジションなどを与えていくほうが、会社や部署の生産性などは上がる。

 東大卒であれ、京大卒であれ、会社の意向に応じることができない者や、期待外れの者、反会社的な言動をとる者、病になり戦力にならない者などは辞めさせればいい」

 ただし、新卒の採用試験においては、東大や京大卒などの学生が、他の大学の卒業者と同じ扱いを受けていることはまずないだろう。しかし、東大や京大卒などの社員が入社後、無条件で、いつまでも好待遇を受けてきたのかと言えば、筆者はそうは思わない。むしろ、同世代の中で熾烈な競争があり、そこで結果を出すことができない場合、その社員は「その他大勢」の中に入れられてきた可能性が高い。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


日本に巣食う「学歴病」の正体

 今の日本には、「学歴」を基に個人を評価することが「時代遅れ」という風潮がある。しかし、表には出にくくなっても、他者の学歴に対する興味や差別意識、自分の学歴に対する優越感、劣等感などは、今も昔も変わらずに人々の中に根付いている。

たとえば日本企業の中には、採用において人事が学生に学歴を聞かない、社員の配属、人事評価、昇格、あるいは左遷や降格に際しては仕事における個人の能力や成果のみを参考にする、という考え方が広まっている。しかし実際には、学歴によって選別しているとしか思えない不当な人事はまだまだ多く、学閥のようなコミュニティもいまだに根強く存在する。学歴が表向きに語られなくなったことで、「何を基準に人を判断すればいいのか」「自分は何を基準に判断されているのか」がわかりずらくなり、戸惑いも生まれている。こうした状況は、時として、人間関係における閉塞感やトラブルを招くこともある。

 これまでの取材で筆者は、学歴に関する実に多くのビジネスパーソンの悲喜こもごもを見て来た。学歴に翻弄される彼らの姿は、まるで「学歴病」に憑りつかれているようだった。学歴は「古くて新しい問題」なのだ。本連載では、そうした「学歴病」の正体を検証しながら、これからの時代に我々が意識すべき価値基準の在り方を考える。

「日本に巣食う「学歴病」の正体」

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