買収完了したシャープに持ち込む
台湾流“信賞必罰”の人事評価
買収決定から4ヵ月が過ぎ、ようやく台湾企業である鴻海(ホンハイ)精密工業グループによるシャープの買収が完了した。そうした動きの中で、ホンハイが打ち出した人事制度が注目されている。
基本的に、ホンハイは台湾流の“信賞必罰”で人事評価を進めるという。これは、相応の成果を出した人を評価し、そうでない場合は評価しない、言ってみれば、単純かつ古典的な人事管理手法だ。
これまで、ホンハイは郭台銘(テリー・ゴウ)という猛烈経営者の下で、機敏な意思決定と厳しい信賞必罰型人事制度の下で飛躍を遂げてきた。それを、今回、シャープに持ち込もうとしている。そうした経営方針の行方が注目される。
今まで、シャープの経営は自社の高い技術力を過信し、環境の変化に積極的に対応する姿勢が欠けていた。それが、“液晶一本足打法”と揶揄されるほどの液晶偏重の経営体制を作り上げてしまった。
その結果、同社は経営環境の変化に適応しきれず、経営が行き詰まった。これは、ビジネススクールのケーススタディーとして扱われるような、典型的な経営の失敗と言えるだろう。
問題は、そうしたシャープの企業文化を、環境変化対応型に転換できるか否かだ。今日の市場環境は短期間で変化しやすい。競争に勝ち残るためには、事業の流れを迅速に読み、それに果断に対応することが求められる。
ホンハイがシャープにそうした企業文化を根付かせることができれば、シャープの将来に明るさを見出すことはできるはずだ。その意味でも、シャープのケースは、わが国企業に大きな示唆を与えることが期待される。
液晶技術に固執しすぎた
シャープの経営陣
シャープは、元々、液晶技術の実用化に世界で初めて成功した企業だった。同社が持つ高い技術力は決して軽視すべきではない。ただ、シャープの経営陣はあまりに液晶技術に固執しすぎた。そこに落とし穴があった。
“液晶一本足打法”と揶揄されるほど経営資源を集中させると、それだけ世界の液晶市場の動向がリスク要因になる。実際、2000年代前半、“亀山モデル”を中心にシャープは好調だった。